2000年5月16日

白川 浩道
「夏場に向けて市場を動かす3つの材料」

 場では、「2000年第1四半期(1−3月期)のGDP成長率については、あまり関心がない」との声が多い。 「マイナス1.4%と予想外に落ち込んだ昨年10−12月対比では、閏年効果もあって+2%程度の成長にはなろうが、その程度のリバウンドであれば、 日本経済に対する見方(緩やかな成長)を大きく変える必要はない」と考えている関係者が多いからであろう。

 際、これまで1−3月期に関して得られている基礎データに基づいた場合、 私も、前期比+2.3%程度との見通しを得ている。個人消費が+2%台半ばの伸びになるとみられるほか、住宅投資、公的需要、外需も小幅の前期比プラスに転化、 また、設備投資も反動減となることなくプラス成長を維持する、とみている。

 ずれにせよ、基礎統計を積み上げると1−3月期の成長は+2%にはなりそうであり、 実際の数字が四捨五入+2%成長なら、市場の反応は薄いとみられる。このように、今後1ヶ月程度を展望する限り、 市場を大きく動かすような材料はあまりなさそうである。しかし、夏場までの3ヶ月程度を視野に入れると、状況は大きく変わる可能性がある。焦点は3つある。

 1には、個人消費の本格的な回復が見え始める可能性である。 私自身、今のところは、個人消費の本格的な回復に懐疑的であり、2000年度通年でも高々+1%程度の個人消費の伸びを想定している。 ただ、生産の増加、企業収益の拡大、家計所得の下げ止まりといった「好循環」が生じているのは事実であり、消費態度さえ前向きなものとなれば、意外に消費も強くなるかもしれない。

 状の消費者コンフィデンスのレベルは、金融危機の生じた97年秋の水準に漸く戻ったに過ぎないが、 株価が軟化する中でもコンフィデンスが順調に改善し、95、96年のレベルに戻るようなことになれば、消費に火がつく可能性もある。

 2には、日銀による「ゼロ金利政策解除キャンペーン」の本格化である。市場はまだ「BOJパッシング」を続けている。 総裁が何を言おうが、「年内のゼロ金利政策解除はない」と踏んでいる。これは、日銀関係者が、「どうやら景気は徐々に回復しているのでゼロ金利を止めたい」と言っても、 根拠が依然やや薄弱であり、「政治的な圧力を考慮すれば、まだ動けまい」との見方に変化がないことを物語っている。

 が、日銀は準備を周到に進めているとみられる。 ポイントは、日銀が、政治家を含め皆が納得するフレームワーク(「インフレ重視政策」)の構築を考えているとみられることである。 景況感の変化に基づいた不透明な金利変更ではなく、よりルールに近い形での金利変更となる可能性が高い。キャンペーンは夏場に始まるとみている。詳細は次回に譲るが、市場の材料となろう。

 後の焦点は、米国経済の変調である。標準シナリオとしては、米国経済が年内は高い成長を続け、株価もそう崩れず、 FEDの引き締めもソフト・ランディングと整合的といったように、美しい形を想定している。

 かし、徐々にこうしたシナリオに自信がなくなってきた。FEDの金融政策に対する信認が厚い分、市場や実体経済活動は、 実際の金融引き締めを待たずとも調整過程入りしてしまう可能性がある。金融引き締めの継続予想(来年半ばくらいまで?)は、株価の調整に加え、 将来の名目成長率のスローダウンを見越した設備投資活動の早目の後退を招く可能性がある。 早ければ、年央には、米国経済のスローダウンが見え、株価の上値が一段と抑えられるという状況が訪れるかもしれない。
以 上  
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