2000年08月14日

白川 浩道
法人マネーの動きは年明け以降の企業投資活動鈍化を示唆

 代表的な指標であるM2+CD前年比の伸びをみると、 景気下押し圧力が最も高まった98年第4四半期には4.0%あったものが、足元では2%を割るところにまで低下している。 こうしたマネーサプライの動きを、「マネーサプライの指標性が、経済主体の行動の趨勢的な変化(バランスシート調整の継続等) によって大きく低下したことの表れ」と受け取るエコノミストが多い。マネーサプライは先行性どころか同時性も失ったという見方である。

 経済統計の指標性(インフレやGDPとの中期的な相関等)については、 十分な時系列データを用いた高度な計量分析に依る必要があり、感覚的な議論は危険である。しかし、以下のチャートは、 それなりに意味するところがあるとみている。以下のチャートは、M2+CDのうち法人保有分(実質法人マネー)を抜き出したものの前年比と、 企業の投資活動(実質ベース、設備投資+在庫投資)の前年比を合わせてプロットしたものである。

 ポイントは、法人マネーが1年〜1年半程度のラグを持って、 企業の投資活動とそれなりの相関を持っている可能性が高いことである。法人マネーは97年Q4に底を打ってから、 99年Q4まで約2年間増加基調を辿った後、本年入り後スローダウンが顕著となっている。他方、投資活動は98年Q4から99年Q3まで底這った後、 99年Q4から拡大に転じている。このことから、企業活動はマネーの伸びに1年から1年半程度遅行しているものと考えられ、従って、 仮に法人マネーが足元から回復しなければ、投資活動は遅くとも来年央には鈍化が始まる可能性がある。

 足元の法人マネーの鈍化についてはどう考えれば良いか。ここで、まず、98、 99年の法人マネーの高い伸びについてその背景を探ると、バランスシート調整によって銀行貸出の伸びが鈍化を続けたことからすれば、 マネーを支えたのは、基本的に、経常黒字、財政赤字、個人消費ということになる。要は、海外、政府、個人からの所得移転が法人マネー (法人所得)に寄与したことになる。こう考えると、本年入り後の法人マネー・スローダウンは、経常黒字の縮小傾向が根底にある中で、 政府支出の力不足、個人消費のもたつきが反映されている可能性が高い。

 今後を展望した場合、世界経済のスローダウンが徐々に顕現化することから、 経常黒字は縮小傾向を強めるものとみられる。また、政府支出についても、全体を引っ張る力はない。従って、 個人消費が中期的に盛り上がらない限り、法人マネーの増加は望めない。IT関連投資に期待するところが大であるが、 これも循環的な投資の性格が濃いとすれば、やはり設備投資のピークは年度末(01年3月末)近辺ということになるか。

以 上  
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