2004年02月27日

白川 浩道
為替相場と世界景気の3つのシナリオ



最近の為替市場では米ドル安が是正される動きとなっている。 米ドルのユーロや英ポンドに対する行き過ぎた上昇を警戒する声が強まっていた中で、欧州中央銀行による米ドル買い介入実施のリスクが意識されたことが大きい。 さらに、こうした米ドル安是正の動きが一時的な現象に止まらず、為替市場の潮目そのものが変わった可能性も否定できない。 また、先のフロリダでのG7会合で「緩やかなドル安継続」に合意したはずの「日米為替政策協調」にも微妙な変化が生じている可能性がある。


為替相場の動向は、世界景気の持続性に大きく影響する。 投資家は、以下の3つのシナリオを念頭におきながら、機動的にポートフォリオ運用を行える体制を整えていく必要があろう。 その3つのシナリオとは以下のとおりである。


シナリオ1:米国主導型の世界的流動性景気長期化

為替市場におけるドル安圧力は衰えておらず、一旦上昇した米ドル相場は再び調整へ向かう。 こうした中で、日本に加え、欧州も、断続的なドル買い介入に踏み切ることになる。 この結果、日本、中国、さらには欧州の流動性が米国債市場に流れ込む。 米国債相場のバブルは破裂せず、米国景気は、10年物金利で4%という、歴史的な超低金利を謳歌する形で、持続的に拡大する。 日欧の景気も拡大基調を継続させる。 また、世界的な長期金利低位安定状態が長期化することから、リスク資産市場や商品市場における価格上昇基調が強まることになる。 なお、通貨安の米国でインフレ圧力が最も強まることから、米国経済が世界景気を牽引する構図が続く。


シナリオ2:日欧主導型の世界的流動性景気長期化

為替市場におけるドル安圧力はこのまま緩やかに後退する。 最近の米ドル相場上昇は米ドル相場の下落基調が反転したことを意味している。 米ドル相場反転の背景としては、 [1]米国における双子の赤字が最悪期を脱しつつあること(特に、これまでの米国景気拡大から米国財政赤字の緩やかな縮小期待が支配的になりつつあることが背景)、 [2]米国における需給ギャップ縮小からディス・インフレ圧力の後退が徐々に顕著になってきたこと、さらに、 [3]それを背景に、米国FEDが政策金利の緩やかな正常化を図る姿勢がみえてきたこと、などである。 こうした中にあっても、日米当局は、米国長期金利の早期上昇による世界景気腰折れを警戒し、日本による断続的な米ドル買い介入を容認する(日本は、事実上、円安誘導を宣言)。 このため、米ドル相場は大きくドル高方向に修正されることになる(1ドル=115-120円程度、1ユーロ=1.10-1.15ドルまで)。 米国債バブルの継続、世界的流動性景気の拡大基調といったストーリーはシナリオ1と同様であるが、ドル高によって、米国内のインフレ圧力が抑制されるため、欧州・日本経済が世界経済を牽引する構図になる。


シナリオ3:世界的流動性景気の終焉

シナリオ2と同様、為替市場におけるドル安圧力はこのまま緩やかに後退する。 しかし、こうした中で、日米当局は、徐々に、米国長期金利の上昇を容認せざるを得ない状況に追い込まれる。 すなわち、日本は、欧州や米国製造業への配慮から、為替相場が110円を超える水準では米ドル買い介入を行えず、その結果、米国債価格は徐々に調整、米国長期金利は徐々に上昇する。 これは、日本政府が、これまでの米ドル買い介入について、「水準の是正を狙ったものではなく、あくまで急激な動きに対抗するもの」としてきたことから、110円を超える円安水準での介入を正当化することは国際的に極めて困難であるためである。 世界的にも、長期金利が上昇基調に転じるとともに、景気の調整懸念が台頭、リスク資産市場や商品市場におけるインフレ圧力も後退する。 流動性によって主導されてきた世界景気は一旦調整局面を迎える。


個人的には、以上の3つのシナリオについて、それぞれ、25%(シナリオ1)、25%(シナリオ2)、50%(シナリオ3)の確率をみている。 米ドル相場の下落基調が終息する中で、日本の円相場押し下げ介入が国際的に認められず、世界的な流動性景気の終焉が迫って来るというシナリオ(シナリオ3)の可能性が相対的には高い、という見方である。


しかし、日本の財務省・日銀は、「為替相場にかかわらず、日本が米国の赤字をファイナンスしていく」旨の政策協調に拘泥する可能性もあり、シナリオ2の確率とシナリオ3の確率が逆転するリスクを否定できない。 日本の為替介入が、円ドル相場でみて、いくらの水準で行われるのか、目を凝らさなければならない。


 

以 上
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