2004年04月19日

白川 浩道
物価安定までの道のりは長い



3月の企業物価指数の前年比はプラス0.2%となり、2000年7月以来のプラスに転じた(チャート1)。

■チャート1■
チャート1


こうした企業物価指数の前年比プラス化を受けて、メディア等では、デフレ終息期待とともに、日銀の量的金融緩和政策に関する出口論(日銀が現在の量的金融緩和政策の必要性を見直し、徐々に金融政策の正常化を図るという意味での金融政策正常化論と言える)が再び盛んになってきている。


実際、日銀の福井総裁は、「デフレをコーナーに追い詰めた。しかし、最後の1マイルが大変である。」などと述べており、物価の安定が視野に入りつつあるようなコメントをしている。


しかし、物価の安定が視野に入ったとはとても言い難い状況にある。最大の問題は、「川上のインフレ」(素原材料や中間財価格の上昇)が「川下」(最終製品価格)には、依然として、殆ど波及していないということである。


最終財の価格と中間財の価格の前年比変化率を比較した場合、今回の景気回復局面では、1999−2000年の景気回復局面と比べて、最終財の価格が相対的に落ち着いている。しかし、これは前年比による比較であって、価格水準そのものの動きをみると、状況はかなり異なる。


すなわち、素原材料の価格は1999年始めをボトムに、既に5年以上も上昇過程にある。それに対して、中間財価格は、昨年秋に下げ止まったばかりである。さらに、最終財価格に至っては、いまだに下げ止まっていない。中間財の価格水準と最終財価格の価格水準の乖離はむしろ拡大しているのである(チャート2)。日本企業の「素原材料価格から中間財価格への転嫁力」、「中間財価格から最終財価格の転嫁力」は、ともに、依然として弱まる方向にある。

■チャート2■
チャート2


こうした状況は、最終財価格・中間財価格比率、中間財価格・素原材料価格比率の動きから明らかである(チャート3)。重要なことは、これら2つの価格比率が、1999−2000年の局面では、循環的にせよ、上昇したにもかかわらず、今回の局面では、低下を続けていることである。1999−2000年当時の方が、日本企業の価格引き上げ能力が高かったことがわかる。

■チャート3■
チャート3


確かに、足元では、全体でみた企業物価の前年比がプラスに転じた。しかし、それは、世界的な景気回復による原材料や一部中間財の価格の上昇によって一時的にもたらされたものであり、日本企業の価格支配力の復活を意味しない。


日本企業の最終財価格への転嫁力が大きく回復し、最終財価格・中間財価格比率が明確に反転するまで、「デフレをコーナーに追い込んだ」などという甘い判断はできないと考えるべきであろう。物価安定までの道のりは長い。超緩和的な金融政策の長期化を予想したい。


 

以 上
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