2004年05月17日

白川 浩道
景気見通し:短期“慎重”、長期“強気”



製造業の活動は既にピークアウト

改めて、主要なマクロ経済指標の動きを確認すると、製造業の活動は、この1月でピークアウトしたとみてよいであろう。
すなわち、鉱工業生産、出荷、製造工業稼動率、実質輸出の水準としてのピークは1月であったとみられる。また、昨日発表された機械受注(製造業からの発注)と雇用(製造業就業人口)のピークは昨年12月であったとみられる。
4−6月期以降、製造業の活動がリバウンドする可能性は低い。その要因は、大きくわけて2つある。1つは、外需環境の悪化である。米国、中国ともに、成長率の加速は想定できない。米国では、仮に、金融引締めがないにせよ、長期金利の大幅な低下はもはや望めない。この結果、足元の長期金利上昇が、耐久消費財消費や住宅投資をクールダウンするものとみられる。2つめは、昨年初以来の交易条件の持続的な悪化である。実需環境の悪化の下で、利益マージンの縮小が意識されるようになれば、企業マインドの後退が予想される。この結果、企業の機械投資や雇用の拡大意欲が循環的に低下するだろう。



非製造業の業況は夏場までは維持される

他方で、非製造業の業況は夏場までは維持されるであろう。その原動力は、マクロでみた雇用情勢改善の下での消費者マインドの回復を通じた個人消費の堅調推移である。オリンピックにむけた家電需要にも支えられ、夏場までは個人消費関連指標の回復が続くであろう。



GDPは4−6月期から“潜在成長率以下”へ

来週公表される1−3月期の実質GDP成長率は1.0%(年率4.0%)程度となろう。この結果、実質GDPは昨年1−3月期から5四半期連続でのプラス成長となり、その平均成長率は年率3.7%と、潜在成長率を2%ポイント程度も上回ることになる。
5四半期連続で“潜在成長率”を超える成長率が実現した後、4−6月期以降は、“潜在成長率”並みか、それを下回る成長率になるであろう。現時点では、4−6月期から10−12月期の実質GDP成長率の平均は、年率1.5%程度とみている。
GDP統計による市場へのポジティブ・サプライズの提供は、来週公表の1−3月期分以降、当面、望めないことになる。



しかし、景気の深い調整は想定されない

しかし、景気の深い調整を想定する必要は引き続きなく、中長期的には、日本経済に対して強気の見通しを維持することが可能であろう。
第一には、企業、特に製造業の資本ストック調整が進展しており、設備投資の循環的な調整圧力は従来に比べてかなり限定的であるとみられる。第二に、在庫の積み上がりが生じておらず、在庫調整圧力が極めて弱い。第三に、医療・福祉等サービス業の雇用が持続的に拡大する中で、雇用情勢の趨勢的な改善が続いている。個人消費の腰折れは想定できない。



日本経済のテーマは、循環的回復から“需給ギャップ”論へ

景気のテーマは、もはや景気循環ではなくなった。今後、年末にかけての焦点は、ストック調整進展の下での昨年来の高成長が、日本経済における需給ギャップをどの程度縮小させており、その結果、マクロでみた物価水準に、今後、どの程度の上昇圧力がかかるか、である。
仮に、輸出や生産が循環的にやや下向きになったにせよ、昨年来の需給ギャップ縮小によって、物価下げ止まりが鮮明になれば、日本経済が“新たな成長フェーズ”に入っていくことは十分可能である。
昨年来指摘してきたように、“新たな成長フェーズ”とは、物価の下げ止まり→賃金下げ止まり→個人消費の持続的回復→国内設備投資の回復といった、ここ10年以上みられなかった成長のパターンである。
今後注目すべきは、消費者物価と日銀の金融政策の2点に尽きる。需給ギャップ縮小の下で、消費者物価が予想外に早期の下げ止まりを達成する可能性は十分にあるが、そうした状況において、日銀がデフレ脱却へのコミットメントを強めれば――プラス1%程度の消費者物価を量的緩和脱却の条件とすれば――、日本経済が“新たな成長フェーズ”に入る確率が高まるだろう。
個人的には、そうしたシナリオの蓋然性に自信を持っている。中長期的な景気見通しは強気を維持したい。


 

以 上
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