2004年08月16日

白川 浩道
7−9月期GDP統計は“爆発”か?


ポイント

 4−6月期の実質GDP前期比は+0.4%と市場予想(+1.0%程度)比極めて弱く、違和感が強く残る内容となった。 9月10日に公表される第2次推計値では、法人企業統計の結果を受けて上方修正される可能性が高いが、市場が注目しなくてはならないのは、7−9月期のGDP成長率が、設備投資の大幅なリバウンドを受けて“爆発する”(非常に高い伸びになる)リスクであろう。 7−9月期GDPの第1次推計値は11月12日に公表されるが、これは、来年度の予算や税制改正の議論がまさに佳境に入る局面であり、GDP統計が爆発的な伸びを示せば、財政緊縮論議が一気に加速するものとみられる。 4−6月期のGDPが減速したことは、7−9月期の再加速と、それを受けた財政再建論議の高まりといった一連の流れを生むことになるだろう。


 先週末に公表された4−6月期のGDP統計によれば、実質GDPは前期比で+0.4%と市場予想(+1.0%程度)に比べてかなり弱いものとなった。 その大きな背景は、企業設備投資が前期比0%と予想外の横這いに止まったことである。 鉱工業出荷統計(資本財出荷)などの月次統計からは、前期比で、少なくとも+3〜4%の伸びは期待できていただけに、ゼロという第1次推計値の結果は、サプライズであったといわざるを得ない。


 こうした予想比かなり弱めのGDP統計を受けて、市場の流れは大きく変わるのであろうか。 あるいは、今回のGDP統計は一種の“異常値”として看過され、株価は底堅い動きをするのであろうか。


 この問に対する筆者の答えは、「市場のセンチメントが大きく悪化する可能性は低い」というものである。 なぜなら、市場は、とりあえず、4−6月期の法人企業統計の公表(9月6日)と、それを受けたGDP統計の2次推計値をみようとする可能性が高いからである。 市場の注目が、9月10日に公表される予定の第2次推計値に集まる可能性が高いのは、今回の弱めの設備投資推計に対して違和感を覚えている多くのエコノミスト(筆者も含めて)が、「設備投資の推計は上方修正される可能性があり、法人企業統計とGDPの2次推計値に注目すべき」と主張するからに他ならない。 この結果、前期比+0.4%と低めのGDPが出たにもかかわらず、市場は、当面、景況感の大幅下方修正をためらうことになる可能性が高い。


 しかし、もっと重要なことがある。 それは、4−6月期の設備投資の推計が弱めになったことで(仮に法人季報を受けて上方修正されたにせよ、1−3月期対比で、前年比ベースの減速は不可避とみられる)、7−9月期の設備投資が“爆発する”(非常に高い伸びになる)可能性が出てきた、ということである。


 そもそも、各種の企業サーベイによれば、前年比でみた企業設備投資のピークは2004年度上期、すなわち、4−6月期、7−9月期である。 たとえば、日銀全国短観では、全産業全規模ベースの設備投資前年比は、2003年度下期の+4.3%から2004年度上期には+8.9%に加速する予想となっている。 こうした2004年度上期における前年比加速シナリオを維持し、さらに、4−6月期の前年比が1−3月期よりも低いという、今回のGDP統計を前提にした場合、7−9月期のGDPは“爆発する”(前期比+2%程度に到達する可能性も十分にある)と読まざるを得ない。


 7−9月期のGDP統計が公表される11月上旬にかけて、市場は、今度はGDP統計が大きく上ぶれするリスクに備えなくてはならないだろう。 従って、9月下旬から10月にかけても、市場のセンチメントが、マクロ面から悪化する可能性は低いのではないか。 あるいは、むしろ、7−9月期GDP統計の“爆発可能性”を材料に、株式市場は上昇傾向を強める可能性すらある。


 11月上旬の7−9月期GDP統計が“爆発する”ことの、政府にとってのメリットは何か? 筆者は、その本質は、「財政再建論を加速させられること」とみている。 05年度における予算の一段の緊縮化と増税拡大を決めたい政府にとって、7−9月期GDPの高成長は大きな支援材料になるだろう。 しかし、このことは、小泉政権の財政緊縮化路線が強まり、来年度の景気に対する下押し圧力が予想以上に拡大する可能性を示唆している。 市場は、7−9月期GDP成長率が“爆発した”後、年末にかけて、センチメントを大きく悪化させるのではないだろうか。 来年1−3月期に、日銀が、量的緩和政策を追加するというシナリオを堅持したい。


 

以 上
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