2004年08月24日

白川 浩道
成長率は4%から2%へ


ポイント

 実質GDP成長率については、04年度+3.8%、05年度+2.0%を見込む。景気は7−9月期までは高水準で走るとみられるが、10−12月期から来年7−9月期にかけては、平均でみて、潜在成長率見合いの年率1.5−1.6%にまで減速するものと予想する。高成長の持続性は低い。


7−9月期は一旦リバウンド

 7−9月期は、4−6月期における企業設備投資小休止の反動や、猛暑の影響から、再び高めの成長率となることが予想される。4−6月期の成長率が+0.4%で据え置かれた場合、前期比+1.1%(年率4.4%)と、再び1%を超える伸びが期待される。


10−12月期以降、巡航速度へ

 しかし、高成長が続くのも7−9月期までと読む。10−12月期以降は、実質GDP成長率の平均年率でみて1.5−1.6%に減速するものと予想する。

 景気減速をもたらす要因については、以下のように考えている。


1.輸出・企業利益拡大の好循環が息切れ

 昨年来の景気拡大は、米国景気回復とそれを受けた中国内需の加速が輸出を拡大させ、その結果、企業利益、雇用が回復し、企業設備投資と個人消費が成長する、といった好循環の下で、もたらされた。
しかし、こうした好循環については、そのモメンタムが落ちてくるものと考えられる。その理由は2つある。1つは、米国の減税政策とそれを支えた日本の金融緩和といった、マクロ経済政策の効果が徐々に消えてくるからである。政策によって作りだされた需要は、いわば、需要の先食いであり、先食いされた需要は時間がたてば、徐々に鈍化せざるを得ない。米国の個人消費、住宅投資がその典型となるだろう。
もう1つは、いびつな物価の回復による弊害である。今回の景気回復は、川下デフレと川上インフレの格差を広げたという意味で、かなり、いびつなものであったといわざるを得ない。重要な点は、日米を中心とした先進国は、最終製品価格の引き上げに失敗しているのであって、その結果、利益マージンが悪化の一途を辿っている。
政策によって刺激された需要が世界的にピークアウトし、生産数量がピークアウトすれば、投入コスト高は大きな減益要因になる。その帰結は、設備投資の抑制と人件費削減や雇用リストラの再加速であると考えられる。


2.国内のマクロ政策は景気刺激的ではない

 国内のマクロ経済政策運営は、もはや景気刺激的ではない。
まず、第一に、金融政策であるが、1月下旬以降、すでに7ヶ月現状維持を続けている。その結果、マネタリーベースの前年比は5%を下回っている。このまま、現状維持を継続させれば、来年1−3月期には、1−2%の水準にまで減速することが予想される。その結果、国債ファイナンスが徐々に滞り、実質金利には上昇圧力がかかることになる。
こうした悪い金利上昇を防ごうと、政府は、財政再建路線を急ぐことになるだろう。予算緊縮化を強めるとともに、個人所得税に絡む実質的な増税措置(1−2兆円規模)を決定する可能性が高い。10月から始まる社会保障負担の引き上げに加えて、来年度の所得税増税が視野に入れば、平均消費性向の一段の上昇は望めない。
来年度における景気スローダウンが予想される中で、日銀は、1−3月期にも量的緩和の追加に動くであろうが、その規模は高々4−5兆円であるとみられ、景気を大きく刺激することにはならないだろう。


3.描けない自律的内需回復シナリオ

 世界経済や交易条件といった、製造業を取り巻く外的環境に左右されずに景気が自律的に回復するためには、国内物価の反転上昇が不可欠である。
しかし、現状では、今後1−2年における、デフレからの完全な脱却を、自信を持って展望することはできない。
その最大の理由は、国内非製造業における過剰営業設備の廃棄が遅れていることである。産業構造改革、あるいは、不採算企業の整理といった企業政策が、いわば、先送りを主体にしてきたことに、その背景がある。
日銀による流動性供給によって、信用リスク拡大の連鎖が抑え込まれていたのであるから、そうした機会を捉えて、思い切った供給サイドの調整策を採用していたならば、日本経済がデフレから脱却する確率は、遥かに高まっていたはずである。しかし、現実はその逆である。
財政政策の趨勢的な引き締めが継続する、という客観情勢から考えれば、需要の拡大によるデフレ脱却を望むのには無理がある。供給サイドの調整が進展してこそ、物価は下げ止まるのであって、それが、みえてこない以上、高い成長率が続くと考えることはできない。


 

以 上
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