2004年11月01日

白川 浩道
景況感の大幅下ぶれリスクに注意


 10−12月期は、景気の先行きに対する懸念が大きく高まる局面であり、注意が要る。懸念材料として、円高進行リスク、政府の増税モード加速、期待はずれの7−9月期GDP、を指摘できる。

 


1.円高進行リスク

 トリガーとなるのは、米国経済の先行き不透明感の高まりとそれを背景とした利上げ期待の修正であろう。しかし、より本質的には、そもそも、円相場がかなり過小評価されている可能性が高いことに留意すべきだ。

 今回の日本の景気回復について、一部では、内需の回復力を評価する声もあるが、これは全くの誤りである。内需のGDP比率が上昇していないこと、経常黒字GDP比率は3%台後半から4%の間で推移しており、対外黒字の大幅な拡大が継続していること、などからすれば、今回の景気回復は、過去2回の局面に比べて外需依存度が高い、と結論付けるのが妥当である。

 外需依存度の高さは、対外黒字の拡大を通じて、円相場に上昇圧力をもたらす。例えば、実質実効為替レートはここ2年程度横這いの動きとなっているが、これは、経常黒字の循環的な拡大と整合的ではない(円は過小評価されている可能性が高い)。

 また、円相場は、日米の生産者物価(PPI、CGPI)の最終財価格でみたPPP(購買力平価)からみても、かなり割安である可能性がある。

 国内デフレ→貯蓄超過状態継続→高水準の経常黒字、といった構図は不変なのであり、円相場に対する構造的な上昇圧力は強い。

 さらに問題なのは、政府・日銀による円高阻止の力は弱い。第一には、国際政治的にみて、当面、大規模為替介入は行いにくい状況にある。こうした状況は、米国大統領選の前後でも大きく変わらない可能性が高い。

 米国経済の脆弱性は製造業の国際競争力後退が背景にあるとみられ、財政政策による内需てこ入れが限界に来れば、米国政府はドル安を志向することで製造業サポートをせざるを得ないからだ。米国政府は、日本による大規模介入を望まない。為替介入が行われる水準は105円程度、しかも、介入規模は大幅に縮小するだろう。

 加えて、国内では、政府・日銀の「来年度増税に対する支持」が邪魔をして、特に短期的には、量的緩和の追加が行われにくい。このため、為替介入が仮に行われても、原則、不胎化介入となり、円高が持続的に進行するリスクを高めるだろう。

 日銀は、先週の福井総裁の財政審出席に代表されるように、財政健全化を強く支持するスタンスにある。実際、日銀は、半期経済報告(通称、展望レポート)で、来年度の実質成長率・コアCPI見通しについて、それぞれ+2.5%、+0.1%を予想しており、強気姿勢を崩していない。このように、増税断行を掲げている政府・日銀にとって、非不胎化介入は遠いオプションなのである。


2.増税モード加速

 市場関係者や大企業の間では、今回の景気回復の持続性が高いという見方が根強い。企業のキャシュフローが大きく拡大しているためである。過去2回の景気回復局面では、こうした議論は出なかった。

 財務省が、こうした日本経済復活論を見過ごすはずはない。「今回の景気回復局面で増税を決められなければ、いつ決められるのだ」、というのが、財政当局の本音であろう。従って、増税に対する政府の執着心は極めて強い。

 さらに、日銀は、財政健全化をより強く後押しする姿勢にある。現総裁は、前総裁にも増して、財政健全化への思い入れが強いことは、過去1年半の日銀の政策運営が端的に物語っている。

 すなわち、日銀は、企業金融のメヅマリを是正するとの論理の下、ABSオペの導入や、株式買取りの期限延長を決定してきたが、国債輪番オペの増額については、それを匂わすことすらしなかった。

 来年度と2006年度の2年度かけて定率減税を廃止し、2007年度に消費税増税というシナリオがほぼ固まってきた。我々の試算によれば、社会保険料負担の引き上げ等と合算した、個人の税負担増加は、来年度におよそ2.5兆円、可処分所得の0.8%にも及ぶ。個人消費のダウンサイド・リスクは大きい。


3.期待を裏切る7−9月期GDP

 4−6月期の実質GDP成長率は前期比+0.3%と、前期の+1.6%から急減速した。政府・日銀は、これを高成長からの一時的な減速とし、7−9月期には、ある程度のリバウンドが望めることを示唆してきた。

 しかし、7−9月期のマクロ経済データが明らかになるにつれて、楽観論は許されない情勢となりつつある。公表された9月の主要データから判断する限り、4−6月期に比べて成長率が目立って高まる可能性はほぼゼロに等しい(前期比+0.5%、年率2%弱といったところであろう)。

 まず、純輸出はGDPに対してマイナス寄与となる可能性が高い。輸出の伸びが鈍化したためである。また、個人消費については、9月の家計調査からも示されるように、前期比マイナス成長となるリスクがある。企業設備投資、在庫投資がプラス寄与となり、GDPを支えることになるだろうが、純輸出と個人消費の減速をカバーしきれるかは微妙である。

 2四半期連続でGDP成長率が潜在成長率(弊社では2%強と推計)を下回るようなことになれば、GDPギャップの縮小が停止し再拡大するため、市場のデフレ脱却期待が大きく後退するだろう。

以 上
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