2004年12月17日

白川 浩道
景況感は一時的に改善へ


 

 

ポイント: 年度下期の設備投資再加速、定率減税廃止の実質先送り、緩和的な米国金融環境、の三拍子が揃った。景気は、2002年初から始まった回復過程の“最終局面”に差し掛かっているが、短期的にみた場合、景況感が改善し、海外からの資金流入が拡大する可能性が高い。ただし、来年半ば以降に国内景気が減速するシナリオを変えるべきではない。

 12月短観のポイントは、2004年度下期の設備投資計画の大幅上方修正である。全産業ベースでは、8.9%ポイントの上方修正で、前年度比+8.1%になった。上期は+4.0%であったから、上期から下期へ、設備投資の伸び率が加速する可能性が示された。

 年度下期に設備投資が加速するシナリオは、最近の機械受注統計の弱さ等からは違和感があるだろう。しかし、機械受注統計と設備投資のラグはかならずしも安定的ではなく、過去の動きを見る限り、1−3四半期である。今回の循環での機械受注(民需総額、季節調整済み)のピークは4−6月期であり、従って、ラグが3四半期あれば、GDPベースでの機械設備投資のピークは来年1−3月期までずれ込む可能性が十分にある。

 また、建築着工と建設投資の間のラグは、2−3四半期であるが、建築着工のピークは7−9月期であったとみられ、この結果、建設投資のピークは来年春あたりとなる可能性がある。

 このように、短観で示された今年度下期の設備投資計画の上方修正は、月次データとの整合性が取れないわけではない。従って、短観で示された企業計画をある程度信用すれば、年度下期の設備投資(GDPベース)が再加速するとの予想を立てざる得ない。このため、GDP成長率は、10−12月期、来年1−3月期に、再び伸びを高めることになるだろう。過度な日本経済悲観論は、一時的に遠のくだろう。

 加えて、定率減税の廃止については、実質的に1年間、先送りされた。すなわち、2005年度からの定率減税縮減は固まったが、2005年中は縮減(増税)が行われない。しかも、2006年1−3月期の増税は、国税分に限るうえ、1−3月期の所得に対する課税額の2分の1となる。すなわち、2005年度の付加的な増税額は2000〜2500億円に過ぎない。このため、05年度の景気へのインパクトはかなり限定的なものになる。

 最後に、12月14日の米国FOMC(公開市場委員会)では、政策金利の25ベーシス・ポイントの引き上げが予想通りに決定されたが、米国の金融政策は、引き続き、ビハインド・ザ・カーブ(景気情勢に比べて、金融引き締めが遅れている)状態にある。短期的にみた場合、米国景気が減速する可能性はほとんどないと考えられる。重要な点は、FOMCのステートメントに変更がみられず、米国FED(中央銀行)における「インフレ警戒姿勢」はさほど強まっていないことである。これは、当面、大幅な利上げの可能性は低いことを意味する。こうした状況を反映して、米国の長期金利は4%強の歴史的超低水準を継続させており、住宅投資、耐久財消費が腰折れするリスクは低い。

 日本経済を含む世界経済は、依然として、回復過程にある。ただ、それは、回復過程の末期、最終局面である。米国におけるインフレ圧力は強く、米国の金利引き上げは来年半ばにかけて加速する可能性が高い。この結果、世界経済は来年央から調整色を強めるだろう。日本経済の最大の問題は、国内のインフレ圧力が弱いことであり、このため、内需の自律的な回復は望めない。世界景気の調整とともに、来年春以降、日本の成長率が低下するシナリオは不変である。

 しかし、短期的には、上記で指摘した理由から、日本経済に対する悲観論が一時的に後退し、日本の株式市場に海外から資金が流入するだろう。さらに、円高期待が根強いことも資金流入を加速させる可能性がある。原油高によって、オイルマネーが拡大しており、世界の金融市場の流動性は拡大している。円が狙い打ちされる可能性は十分にある。1−3月期の株式市場が再び活況を呈する可能性がある。

 

以 上
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