2005年01月18日

白川 浩道
市場見通しアップデイト



 短期的な円高・株高予想を堅持したい。為替市場では円高圧力が強まる可能性が高いが、円高予想の下で、日本のマクロ経済データ改善を評価する国際マネーが日本市場に流入して来るものと引き続き予想する。世界的な株安のトリガーを引くのは、米国における大幅利上げ期待であろう。しかし、当面、市場が大幅な利上げを予想するような展開にはならないだろう。


 11月の機械受注(コア)は前月比+19.9%と爆発的な伸びを示した。金融・保険業、通信業による発注が、それぞれ、+163%、+42%になったという特殊要因を割り引く必要はある。ただ、それでも、機械受注は+2%程度伸びており、リバウンドしたのは事実である。9−10月における2ヶ月連続でのマイナス成長は、企業利益の動向からみて弱過ぎた感があり、その意味で、足元での機械受注回復は予想通りである。


 機械受注に続く注目指標は、12月の雇用統計と家計調査(ともに1月28日公表)である。11月の鉱工業生産は前月比+1.7%に上方修正され、稼動率も1.3%ポイント上昇した。こうした状況下、雇用環境が再び12月に改善している可能性が高い。また、雇用環境改善の下で、家計消費(サービス、飲食等)が盛り返している可能性がある。我々は、生産=雇用=消費の好循環が短期的に復活するものと予想しているが、それがデータで確認されるかどうか、注目である。


 このように、マクロ経済指標は、一時的に改善基調を辿る可能性が高い。日本経済は、原油高やハイテク需要の一時的な後退等によって、昨年4−6月、7−9月期とゼロ成長を余儀なくされたが、10−12月期、本年1−3月期(特に1−3月期)には、最終需要が最後の踏ん張りをみせる可能性が高い。日本の株式市場が海外から見直される可能性は十分にあると言えよう。


 さて、こうした中で、引き続き、円高基調を予想したい。円相場は、2月の半ばにかけて、97−98円を目指すであろう。最大の理由は、米国金融政策のビハインド・ザ・カーブ(インフレ圧力に比べて金融引き締めが遅れること)が継続することである。


 米国連銀内部では、一部の鷹派が大幅利上げの可能性を示唆するようになっている。これは、インフレ圧力の高まりからすれば、当然のことと言える。12月のPPI(最終財コア)前年比は+2.2%と11月から0.3%ポイントも上昇している。その背後では、製造業稼動率も着実な上昇(最終財で76.1%から78%へ上昇)をみせている。


 しかし、2月1−2日のFOMC(米国連邦公開市場委員会)では、「慎重なペースでの利上げ」という文言を外すことはできないであろう。それは、2月4−5日にロンドンで開催されるG7会合で、米国が財政政策の早期健全化にコミットするからである。社会保障制度改革を中期的課題として採り上げた上で、06年度予算の緊縮化を表明するだろう。仮にそれが政治的なポーズに過ぎないにせよ、米国は、財政健全化に舵を切るという印象を強く打ち出すことになる。こうした状況では、米国金融政策の早期大幅引き締めは許されにくい環境ができあがるものとみられる。


 米国金融政策がビハインド・ザ・カーブを継続する中で、為替市場におけるドル安基調に大きな変化はないだろう。問題は、米国が、ドル安基調を積極的に演出するかどうか、である。欧州は、そうした動きを警戒する意味から、為替市場介入の可能性に言及し始めた。ユーロ相場の新たな上昇基調入りは歓迎しないということである。しかし、逆に言えば、こうした状況では、円相場が狙い撃ちされ、大幅に上昇するリスクが高まっていると読まなくてはならないのである。


 円相場が100円を切った場合、日本は為替介入を復活させるであろう。しかし、その規模は大きなものにはなりにくいとみられる。日銀による量的緩和の追加が望めないからである。日銀は、最近、資金供給オペの札割れを演出することで、当座預金ターゲットの再拡大を渋るスタンスにある。量的緩和の拡大が望みにくい状況で、大規模為替介入を復活させるには、FB(政府短期証券)を日銀に引き受けさせるしかないだろう。しかし、日銀乗り換えの再延長を決めた直後にFB引き受けを復活させられるのか、疑問である。


 従って、円相場は、目立った為替介入が行われないままに、オーバーシュートするリスクがある。そして、円のオーバーシュートがデフレ再燃期待に繋がる局面が、米国大幅利上げ期待が持ち上がる局面と重なって、市場は、円安・株安方向に反転するであろう。そのタイミングは3月以降であると読む。

 

以 上
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