2000年09月13日

白川 浩道
個人消費は実は強い?

 個人消費は未だ回復していないとの見方がある。しかし、それはどうであろうか。実際には、個人消費を取り巻く環境は改善している。労働省が発表した7月の現金給与総額は前年比−0.1%となった。決まって支給する給与部分が前年比+1.1%と伸びを高めたが、ボーナス部分が6月の反動から前年比−2.3%となったためである。しかし、6、7月を2ヶ月平均してみると、家計の実質所得は前年比でみて1%台半ばで推移していることが確認されたのである(グラフを参照)。消費マインドの改善は全体としては依然限定的であるが、1%台半ばのペースで実質所得が伸びていることは、1%強の実質消費の伸びがもたらされても不思議ではないことを意味している。

 他方、4−6月期の法人企業統計が大蔵省から公表された。ここからは、企業の売上、利益環境は着実に改善を示してはいるが、依然として、中期的な成長率の改善に自信を持てるような内容とはならなかった。これはどういうことか。すなわち、最大の注目点は、労働分配率(人件費/経常利益+支払利息+減価償却費+人件費)の調整が必ずしも十分にはみられなかったことである。季節性の問題から、4−6月期の労働分配率(67.2%)が1−3月期(63.1%)に比べて上昇することは致し方ないが、前年同期(71.1%)と比べた低下の程度は1−3月期(前年は66.6%)から変わっていない。すなわち、構造的に高止まりしている労働分配率(80年代は平均的に60%程度で推移)の低下テンポに加速感がみられなかったのである。簡単に言えば、企業はリストラを先延ばしにして、今は従業員向けの給料を結構支払っているということである。

 さて、このように個人の所得環境は明らかに改善している。しかし、消費統計は依然として悪い数字が出ている。7月の勤労者世帯・実質消費は、予想に反し、前年比マイナス幅が拡大し、マイナス3%を超えた。賞与部分が引き続き前年割れとなったことから、名目実収入が前年比1%程度の減少となったうえに、消費性向が71.3%と春先の水準にまで落ち込んだことが影響した。ただ、こうした消費統計は、消費者が、食料品、衣料品といった非耐久消費財に対する慎重な消費態度を崩していないことを表しているに過ぎない。パソコンやAV機器は極めて高い売れ行きをしているし、自動車の販売も前年比3−4%のペースで走っている。所得環境の改善の下で選択的な消費がかなり回復していると言えそうだ。

以 上  
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