2005年01月28日

白川 浩道
短期的な円高・株高シナリオは健在



ポイント:
昨年12月に関するマクロ経済データは、引続き今1−3月期の経済成長率リバウンドを示唆している。 特に、投資財出荷の大幅な増大(+6.3%)は注目に値する。 また、2月4−5日にロンドンで開催されるG7会合については、為替政策面で目新しい内容が出てくる可能性は低く、市場では、「ドル安容認」という評価が高まろう。 2月1−2日の米国FOMC(連邦公開市場委員会)では0.25%の再利上げが決定されるだろうが、直前にG7会合を控えていることから、「慎重なペースでの利上げ」という表現が削除されることはないとみられる。 高止まりしている原油価格がある程度下落することが条件ではあるが、「短期的な円高・株高」シナリオは健在であると考える。 「足元がソフト・パッチで年後半から回復」というシナリオの設定の仕方は危険であると言える。


 注目の12月の鉱工業生産は市場予想並みの−1.2%となった。 我々は0.0%を予想していた。 一部工場火災を反映した輸送機械の減少(−3.0%)を除いても、−0.8%程度であり、期待が大きく裏切られた格好である。


 しかし、今月の生産統計を悲観的に捉えるのは誤りであると考える。 2つの点において、生産統計は、1−3月期GDPのリバウンドを示唆している。 すなわち、[1] 生産と出荷のバランスが明らかに崩れており、短期的に生産のリバウンドが生じる可能性が高い。 重要なことは、生産・出荷指数比率が12月に大きく下落したことである。 出荷のトレンドが依然上向いている下での、12月の生産の大幅な落ち込みは正当化されないということである。 1月の鉱工業生産はリバウンドする可能性が高い(+2%程度の伸びは十分にあり得る)。 また、[2] 企業設備投資の同時指標である投資財出荷は前月比+6.3%と、力強い伸びとなった。 1−2月にある程度弱含む可能性はあるが、水準の大幅上昇により、1−3月期GDP統計における企業設備投資が高めの成長となる蓋然性が高まった。


 他方、労働力調査も、ほぼ予想どおりの改善を示した。 就業人口の前月比20万人増が予想されていたが、実際は、29万人増となった。 従業員規模500人以上の大企業は、10−11月に雇用を増加させたことの反動もあって反落したが、中堅・中小企業、自営業・家族従業者では、雇用が増加した。 情報通信、運輸、飲食店・宿泊業の牽引した。 また、有効求人倍率は、求職者の減少と求人の増加という趨勢が継続する中で、0.94倍と前月比+0.02ポイント上昇した。 新規求人倍率も1.45倍と反落した前月から+0.07ポイントの上昇となった。 トレンドとしての労働需給改善は継続している。 鉱工業生産がリバウンドする可能性が高いとすれば、就業人口は1月も拡大しよう。


 このため、個人消費が1−3月期に再度リバウンドする素地ができたと評価される。 なお、12月の個人消費は予想比やや冴えない展開であったが、消費の底割れが生じているという状況にはない。 すなわち、家計調査の実質消費は前年同月比−3.8%と前月の−0.7%から大きく落ち込んだが、これは、可処分所得の大幅減少によるものであり、冬のボーナスがさほど悪くないという実態から乖離している。 調査対象家計のバイアスが反映されていると読むべきであり、消費の悪化度合いが誇張されているとみた方が良い。 その意味では、商業販売統計の小売業販売額(12月−0.7%、11月+0.6%)が消費の実態により近いだろう。


 さて、G7会合と、それに先立つFOMCに関しては、従来からの見方を変える必要はないだろう。 すなわち、FEDは、次回のFOMCでは25ベーシスの追加緩和を決定するだろうが、大幅利上げの可能性を示唆し得ないだろう。 なぜなら、米国政府は、2月4−5日のG7会合において、財政健全化キャンペーンを実施するからである。 政府による財政健全化キャンペーンは、FEDの大幅利上げに対する牽制効果を持つことになる。


 米国政府による財政健全化キャンペーンは、国際的な(特に欧州からの)国内貯蓄過少批判に政治的に対応するという意味合いが大きく、実際に、米国の財政赤字がどの程度のペースで縮小するのかは明らかではない。 事実、米国政府は、2009年度までの財政赤字半減を主張しているが、現実には、「2006年度の4000億ドル強から2009年度には2600億ドル程度まで」という35%削減が赤字削減のターゲットであり、それ以上のものではなさそうである。


 むしろ米国が財政赤字削減キャンペーンに打って出ることによって、G7会合では、為替相場の議論がアンタッチャブルとなる可能性がある。 欧州もドル安批判を強められないからである。 その意味で、「為替相場形成については市場に委ねる」という方向性が確認されるのではないか。


 これは、市場に、「ドル安容認」という材料を与えることになるだろう。 特に、真意はどうであれ、G7 会合後、欧州がアジア通貨の割安問題を再度蒸し返す可能性があることからすれば、円相場は円高方向(99−100円くらいまで)に振れやすい展開になるであろう。 ただ、中国元の切り上げ問題が今回のG7会合で急劇に進展することはないだろう。


 日本のマクロデータ改善と円高期待は、短期的に、日本の株式市場にとってプラスであろう。 なお、円高・日本株高の度合いを読む上では、原油価格の動きに注意したい。 原油価格の先高感に終止符が打たれ、原油のロング・ポジションが是正された場合、日本市場に回ってくる流動性は大きくなると考えられるからである。


 最後に、短期的な円高・株高が、本当に短期間(春先までの高々2−3ヶ月のもの)で終わるのか、あるいは、その先まで継続するのかを考える上では、「日米が新たなドル安合意に踏み込むのか」という点が決定的に重要である。 90円台前半の円高が生じれば、日本は為替介入を復活させ、世界的な流動性水準は再び上昇する。 そうなれば、流動性景気は予想外に長期化する可能性がある。 現状では、次回のG7会合は、「ドル安基調容認」はあっても、「ドル安誘導」は出て来ないとみている。 しかし、現下の日米政権の蜜月状態は想像以上のものであるかもしれず、「ドル安誘導=日本の為替介入復活」を完全否定はできない。 G7会合で何が起こるのか、目を凝らす必要がある。

 

以 上
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