2005年09月26日

白川 浩道
2008年度問題と過剰流動性


 結論から言う。 日銀による過剰流動性政策は、2007年まで、向こう2年程度は継続するだろう。 最近公表になった基準地価では、東京23区の地価が15年ぶりにプラスに転じ、不動産市場の一部では、既に不動産バブルを警戒する声すら挙がっている。 しかし、この流れは、向こう2年は止まらないだろう。 なぜなら、自民党は、現ブッシュ政権の最終年である2008年までに、多くの懸案を片付けなければならず、2007年夏の選挙でも大勝しなくてはならないからである。 選挙で大勝するためには、国内景気の持続的拡大が必要であり、そのためには、過剰流動性政策の継続が必要なのである。 以下で、やや詳しく論じることにしよう。


(1)2008年度の実現を目指した4つの政策目標

 第3次小泉政権に残された政策目標はなにか。 それは、[1]財投改革の目玉である公的金融改革、[2]公的年金制度維持を目的にした消費税大幅増税、[3]9条に焦点を当てた憲法改正、[4]小さな政府シナリオの目玉である公務員総人件費の抑制、という4つの施策に関して、その道筋をつけることである。 重要なことは、道筋をつけるということであって、達成することではない。 国民の意見をはかりながら、これらの政策目標を達成するのは、次の政権の仕事である。

 興味深いことに、自民党は、これらの目標を実現するターゲットとして、基本的に、2008年度を設定している、ということである。

 公的金融改革(政府系金融機関の統廃合)については、2008年度から新体制に移行する、とされている。 また、消費税の増税は2007年度に実施される可能性が大きく低下したため、2008年度の確率が高い。

 憲法改正については、小泉「後」の政権の仕事であることを考えれば、2007年度では時間が足りず、2008年度以降がターゲットとなる。

 最後に、公務員の人件費抑制については、一時、「2007年度から5年間で6000億円削減」との情報が流れたが、その後は、明確なターゲットは示されていない。 本件については、2007年度ないしは2008年度がターゲットであると考えられる。


(2)なぜ2008年度なのか

 なぜ、2008年度までに、4つの政策目標(特に、公務員人件費の削減を除く3つの目標)を達成しなくてはならないのか。

 その最大の理由は、米国ブッシュ政権が2008年まで、であり、かつ、2009年以降は、米国で民主党政権が誕生する可能性がそれなりに高いからである。 米国における民主党政権の誕生は、保護主義の台頭や、外交面における日米蜜月状態の解消、など、日本を取り巻く環境に、様々な不確実性をもたらす可能性がある。 そうしたリスクが見えている以上、自民党は、2008年度をターゲットに、4つの目標を実現させる構えなのである。


(3)3つの政策目標にとっての米国

 公的金融改革において米国が果たす役割は、ストレートに言えば、日本の銀行株への投資、および政府系金融機関の不良貸出先企業の再生、である。 米国の政権が民主党に変わった場合、こうした対日投資が継続するか、不透明である。

 消費税増税にも、米国の協力が欠かせない。 日本経済が再生した大きな背景は、日銀による過剰流動性の供給があることは言うまでもないが、それを可能にしたのは、ブッシュ政権の経済外交である。 なぜなら、ブッシュ政権は、日本政府による未曾有の為替市場介入を黙認し続けたからである。

 さらに、ブッシュ政権が、日銀による安易な量的緩和解除に一貫して反対してきたことも見逃せない。 消費税の増税を断行するためには、資産インフレを起こしてでも、日本経済を回復させることが必要であり、そのためには、日銀の金融引き締めに反対するブッシュ政権の存在は大きい。

 自民党が目指す憲法改正の最大の焦点は第9条の改正である。 対テロ鷹派のブッシュ政権から民主党に政権が移った場合、日本の憲法改正論は大きく後退する可能性がある。


(4)2007年夏の衆参同時選挙が山

 こうした中で、2007年夏には、参院選に加えて、衆院選も行われる可能性が高い。 衆参同時選挙である。 自民党は、新総裁の下で、2007年夏の国政選挙を戦うことになろうが、そこでは、「消費税増税に賛成か、反対か」、「憲法改正に賛成か、反対か」という、2大テーマが設定されるだろう。


(5)2006年度中の量的緩和解除はあり得ない

 この2大テーマについて、共に、国民の信認を得るためには、2007年半ばになっても、国内景気が好調であり、株価も崩れていないことが大前提となる。 特に、2006年度の景気が減速するといった事態はなんとも回避したい、という意識が自民党に強く働くであろう。

 そうであるとすれば、2006年度中に、金融・財政政策が明確な引き締めに転じる可能性は極めて低い。 仮に、消費者物価がプラスに転じ、デフレ脱却論が進展しようとも、政府は、2006年度中の量的緩和政策の解除に強く反対するであろう。 過剰流動性政策あっての自民党なのである。

 

以 上
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