2005年12月06日

白川 浩道
日経平均20,000円へ


 株価の上昇が続いている。外人投資家の日本株に対する強気な姿勢は変わらない。注目しなくてはならないのは、景気動向と株価の格差が広がっていることだ。簡単に言えば、外人は景気の短期的な動きにはさほど興味はない。

 外人投資家が景気動向に敏感に反応しているのであれば、10月以降の株価は軟調に推移しているはずである。夏場以降の景気をみた場合、個人消費、設備投資ともに減速傾向が強まった。その最大の背景は、原油高、素材高である。投入コストが上昇、利益環境が悪化したため、企業の多くは、設備投資を抑制するだけでなく、労働時間の削減やテンプ・スタッフへのシフトを通じて、人件費の削減を進めた。この結果、サラリーマン給与の伸びがピークアウトし、個人消費が力強さを失った。

 10月以降は、原油価格の下落に加え、中国、米国向けの輸出が回復傾向を示してはいる。しかし、ドル高傾向の継続は米国における利上げ期待の根強さを反映したものであり、米国の利上げが米国景気の減速・日本の外需の後退につながるとすれば、本来、日本株投資にはさほど強気にはなれないはずである。それにもかかわらず、外人は、円安傾向をむしろ追い風にするような形で日本株買い意欲を強めているのである。

 なぜ、外人は日本株にここまで強気なのか?それは、小泉政権の構造改革が景気循環とは無関係に株高をもたらすと考えているからなのである。日本の株価には構造的にみた上昇余地が大きい、と外人はみている。

 小泉政権の構造改革のエッセンスは、政府債務の削減である。要は国の借金を減らそうということである。そして、それを増税ではなく、基本的には、歳出の削減で行おうとしている。外人は、景気減速リスクを伴う増税政策を先延ばしする一方で、歳出改革を通じて国の財政赤字、借金を減らそうという現政権の姿勢をきわめて高く評価している。衆院選での圧勝により、国の無駄な歳出の絞込みが容易になったと判断しているわけだ。

 こうした中で、郵貯・財投改革が、外人の強気姿勢を大きく後押ししている。日本人は、郵政民営化、政府系金融改革と言っても、最終的には官僚の抵抗にあって思い切ったことはできないのではないか、あるいは時間がかかる話で、向こう2−3年の間に大きな変化など出まい、とシニカルに考えがちである。しかし、外人は、政府系金融機関が1つに統合され、その貸出残高が大きく縮小すれば、政府の借金残高が大きく減るのも事実である、として、非常に前向きに捉えているのである。

 なぜ、政府の借金残高が減ることは良いことなのか。それは、国内マネーの一部が国債を買う負担から解放されるからである。簡単に言えば、リスクマネーが増えるということである。財投改革が成立すれば、最大の場合、国債残高は、むこう2−3年で80兆円も削減される。80兆円もの資金が国債市場から解放されることになるわけで、これが、株式、不動産に向かえば、大きなインパクトが生じる、と外人は考えている。

 さて、このように構造改革を評価する外人は、とりあえず、どの程度までの株価上昇を想定しているのか。我々の見方では、TOPIXで2,000ポイント、日経平均で20,000円である。これは、マクロでみた企業利益のGDPシェア、長期金利、名目GDP成長率の関係から割り出される理論値である。イメージで言うと、東証1部株式時価総額のGDP比率は120%台の後半、時価総額そのものでは630〜640兆円であってもおかしくない、というものである。

 こうした計算が成り立つのは、法人企業(金融を除く)の経常利益のGDP比率が既に1989年1−3月期の歴史的ピークを超えるものとなっている中で、長期金利と名目GDP成長率の逆転現象が定着する方向にあるためである。すなわち、足元では、名目成長率が1.7−1.8%に達する一方で、長期金利は1.5%程度であり、長期金利水準が経済成長率を下回る状態となっている。過去1年の平均でみても、長期金利水準が経済成長率の格差はほぼ解消されつつある。重要なことは、長期金利と名目GDP成長率の逆転現象は、1988年から1990年の株価バブル期にみられた現象なのである。

 財投改革を中心に政府の借金が削減され、日本国債の格付けが上昇すれば、日銀が拙速に量的緩和を解除し国債の売却を行わない限り、長期金利水準が経済成長率を下回る状態が継続するであろう、そうであるとすれば、日本企業の利益水準(伸び率ではなく、水準が問題)が落ちない限り、株価は20,000円までは上がる、というのが外人の読みなのである。

 

以 上
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