2005年12月21日

白川 浩道
景気拡大は来年夏まで?


1. 来年夏場にかけての景気見通しを上方修正

 これまで、2006年度の実質GDP成長率については、市場コンセンサスを下回る1.5%成長を予想してきたが、2.1%への上方修正を決定した。上方修正の主たる背景は、12月短観における05年度下期設備投資計画の大幅上方改訂、最近の輸出・設備投資関連データの改善、非勤労者世帯消費の上振れ、である。


2. 最近の景気情勢の評価

 国内景気に大きな下押し圧力がかかりかけたのは、7−9月期である。原油価格や素材価格の上昇により、大幅なコスト・プッシュが生じたためである。しかし、企業は、労働時間の縮小を通じて労働生産性を高めると同時に、夏のボーナス以降は、基本給を中心に賃金の伸びを抑制し、労働コストの削減を図った。この結果、企業は、一時期懸念されていた減益を免れるとともに、そのバランスシートをさらに改善させた。7−9月期の法人企業統計では、流動比率の上昇傾向に大きな変化がないことが示され、日本企業が依然としてかなりキャッシュ・リッチであることが確認された。

 こうした中で、10月入り後は、中国・米国向けの輸出が新たな回復傾向を示し、外的環境が改善した。さらに、原油価格の軟化と円安が同時に進行したことから、企業の所得環境改善期待が高まり、これが、今日公表された12月短観における、05年度下期の設備投資計画の大幅上方改訂となって顕在化したものと解釈される。なお、05年度下期の設備投資計画の上方修正は、最近における民間非居住建築着工統計のボトムアウトと整合的であると考えることができる。輸出・設備投資循環が、新たな回復過程に入ったとみて良い。

 個人消費に関しては、企業の賃金抑制傾向を受けて、夏場以降、やや弱含む展開にあったものの、9月以降、再び回復力を強めている。その背景としては、株高による資産効果が有力であるとみられる。財政構造改革期待、円安傾向、外需環境の改善などを背景にした株価上昇の個人消費刺激効果は、日経平均が12,000円を超えた当たりから強まっている。注目されるのは、非勤労者世帯(年金世帯、個人事業主世帯)の消費が、サラリーマン世帯の消費を大きくアウト・パフォームし始めた点である。


3. 景気回復の持続性について

 米国景気が堅調に推移する中で、急激なドル安・円高が回避され続ける限りにおいては、国内景気が大きく崩れる可能性は低い。

 現状では、米国景気が短期間のうちに大幅に減速する可能性は低い。金融政策は依然として緩和的であり、銀行貸出に減速感がみられていないこと、製造業の稼働率が上昇傾向にあり、企業の利益環境が引き続き良好であること、をその背景として指摘できる。

 このため、米国の緩やかな利上げ期待は当面は継続する可能性が高く、日銀が拙速に量的緩和を解除しない限り、少なくとも来春までについては、円高の余地が限られるだろう。実際のFF金利については、来年5月にかけて4.75%まで引き上げられるとみる。

 従って、外需、企業の所得環境は来春までは改善傾向を続けると予想したい。そうした中で、政府系金融機関の縮小、歳出カットによる新規国債発行の削減、国債買い入れ消却などの一連の財政構造改革が、実質金利低下期待となって、外人投資家の日本株投資を支えるものと考えられる。株式市場の地合いは、年明け後も良好であろう。その結果、資産効果による個人消費押し上げ効果は、夏場頃まで継続すると考える。

 企業利益と設備投資のラグ等を考慮に入れれば、設備投資も来年夏場までは堅調に推移するだろう。個人消費と合わせて考えた場合、来年夏前に国内需要が減速するリスクはかなり小さい。

 もっとも、来年秋以降の景気については不確実性が高い。今回の景気回復は、世界景気の拡大と量的金融緩和によって支えられてきたからである。米国FF金利ターゲットが5月に4.75%まで上昇する中で、年後半からは、米国景気の減速圧力が高まるであろう。そうした状況で、7−9月期に、日銀が強引に量的緩和解除に踏み切った場合には、一時的にせよ、円相場が大きく上昇すると考える必要がある。量的緩和の縮小度合いによるが、1ドル100円程度までの円高が短期間のうちに生じる可能性は否定できない。

 米国景気減速・円高によって株価が崩れれば、個人消費も減速する。来年秋以降も景気が持続的に回復する可能性については、慎重にみておくべきであろう。

 

以 上
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