2005年12月30日

白川 浩道
2006年の株式市場展望


3つの注目材料

2006年の株式市場を展望する上で3つの材料に注目したい。
それらは、1.米国景気の動向、2.日銀の量的緩和政策の行方、3.ポスト小泉の政治情勢、である。

これらの材料が重要な理由は簡単である。 まず、日本の景気は依然として輸出・設備投資循環に大きく依存しているため、米国景気と国内景気が完全にディカップル(乖離)する可能性は低い。 また、日銀が供給する流動性は、米国の債券市場を経由する形で、日本の株式市場に流入している。 日銀が流動性供給の蛇口を閉めれば、当然、株価に大きな影響が出る。 最後に、衆院解散後の株価上昇をみれば一目瞭然であるように、外人投資家は、現政権の経済改革路線を高く評価している。 ポスト小泉において改革路線に変化が生じるようであれば、外人の期待が萎み、日本株投資が減ることになる。


米国景気は大丈夫か

米国景気がリセッション(景気後退、実質成長率が2%以下に低下)に入った場合、輸出の大幅減少と設備投資の腰折れという事態を招くだろう。 その結果、株価は機械関連銘柄を中心に崩れるであろう。
それでは、米国景気がリセッション入りするリスクはどの程度とみておけば良いだろうか。 筆者は、来年に限って考えた場合、その可能性は、依然としてかなり低いとみている。 最大の背景は、不動産バブルがはじけるまでには、今しばらく時間がかかりそうであるからだ。 米国では、健全化・合理化を経営戦略上の最優先課題に掲げる企業が多く、企業部門の資金需要は弱い。 このため、長期金利が上昇しにくい状態が継続しており、家計の住宅ローン借入れ負担はまだ小さい。 従って、住宅投資が失速し、不動産市場が急激に調整するリスクは限定的である。 不動産価格の上昇が継続する限り、米国経済は安定成長を継続するとみられる。


量的緩和は解除されるのか

日銀は、消費者物価のプラス化を受けて、ジャブジャブの流動性供給を行っている現在の政策を修正し、徐々に短期金利をプラスの世界に戻していこうと考えている。 いわば、金融引き締めを考えているわけである。 時期としては、早ければ、来年2−3月にも実施したいというのが、日銀執行部の本音のようである。 しかし、日銀の計画どおりに金融引き締めが実現する可能性は極めて低いだろう。
重要なことは、賃上げ・消費拡大・物価上昇というメカニズムは簡単には働かないとみられることである。 経団連などでは、来春のベアを容認する動きがあるが、企業が従業員の給与を全体的に引き上げる可能性は小さい。
日本企業は、海外・国内の両市場において、競争環境の激化にさらされている。 海外市場ではアジア諸国の追随が激しい。 また、国内市場では、自由化の流れが強まっている。 今後、官から民へという動きが加速し、国の関与が弱まれば弱まるほど、また、規制緩和が促進されればされるほど、企業は価格を引き上げにくくなる。
そうした状況において、企業は、どうしても給料の伸びを抑制していかざるを得ない。 一部の有能な技術者には高めの給料を払う一方、単純労働者の給料はカットするだろう。 このため、消費も、二極化状態になるだろう。 高額商品と低額商品が売れるという世界である。 物価指数には、高額商品はあまり含まれないから、物価指標が上昇傾向を強めるシナリオは描けない。
政府・日銀ともに、消費者物価が安定的にプラスであり続けるという可能性に自信を持てないであろう。 そうした状態で、日銀が量的緩和政策を解除することは容易ではない。 最短でも、来年秋まで緩和解除はお預けになる、と読む。


ポスト小泉で連続性は保てるか

公務員の人件費削減、社会保障給付の抑制、政府系金融機関の大幅縮小など、歳出改革を優先する一方、増税を先送りにする路線が継承される限り、外人の構造改革期待は変わらない。 外人が嫌うのは、小泉後の政策運営が「早期の増税を容認、小さな政府路線を修正」となることである。
来年9月以降も、経済政策運営の連続性が保たれる可能性については、現状ではそれが高いと考えて良いだろう。 なぜなら、国民自身が今の路線が継続されることを望んでいるのであり、また、2007年夏には参院選を控えているからである。

以上のように考えてくると、2006年も、株式市場に大きな逆風が吹く可能性は高くない。 しかし、年前半と後半を分けて考えた場合、後半については、やや慎重な見方を要するのではないか。 米国景気の減速リスク、日銀よる量的緩和解除リスクともに、時間が経過すればするほど高くなる筋合いにあるからである。 政治面でのリスクが小さくとも、景気と流動性の2つが崩れれば、株価がある程度下落する可能性は覚悟せねばならない。 株式市場については、年前半は強気、年後半はやや慎重、という姿勢で臨みたい。

 

以 上
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