2006年02月23日

白川 浩道
2006年は綱紀粛正の年?


筆者は日本という国が大きく堕落したとまで言う気はない。景気は好調であり、企業や家計の所得も増え始めている。デフレ圧力が後退し、金融システムも安定化し、先行きの悲観論がなりを潜めつつある。好ましいことである。

他方で、昨年以降、やや気になる政策論議がある。それは、中長期的な経済成長率の目標を高めに設定し、増税論を封印しようとするものである。早い話、インフレによって税収を増加させ、財政健全化を達成しようという代物である。

安易な増税論は、(1)本来行われるべき歳出の見直しを先送りし、政府部門が無駄な投資を蓄積するリスクをもたらす、(2)増税のやり方によるが、企業や家計の投資・消費インセンティブを阻害し、景気を悪化させることでかえって税収を減少される可能性がある、という点で問題である。

しかし、インフレ政策にも問題がある。なぜなら、日本のインフレ率は歴史的にかなり低く(消費者物価上昇率の過去20年の平均はたったの0.6-0.7%程度である)、政府によるインフレ宣言は、一時的な過剰消費とその後の景気後退をもたらす可能性がかなりあるからだ。日本人の平均的な生活実感に合わないインフレを起こすという政策は、景気の不安定化を招くだろう。さらに言えば、日本経済は、ゼロ%の物価でも株価が年間4−5割上昇するような経済である。インフレ率を2-3%にするなどといったら、株価や地価が暴騰する可能性がある。資産バブルの再来に他ならない。バブルはいつの日かまたはじける。景気は再び大きなアップ・ダウンにさらされる。

その意味では、「プラス2-3%のインフレを持続的に起こし、その結果、プラス4-5%で経済を成長させ、そこから得られる税収の増加で過去の政府の借金を棒引きしよう」という政策アイデアは、「持続性に乏しい」という欠陥がある。

日本経済には、その実力にあった、維持可能な、バブルの生成も崩壊も起こさないような、成長率があるはずである。筆者のイメージからすれば、それは、2-3%である。潜在成長率が2%程度、バブルにならないインフレ率が0-1%、という世界である。実力に見合わない「4-5%成長目標論」ではなく、実力に見合った「2-3%成長目標論」が妥当であるように思える。

綱紀粛正とは、実力以上の成長目標を立て、それによって株価を吊り上げていこうとするような政策運営を正し、より地に足をつけた政策を採って行こうという、政府部内での大きなウネリをさす。時価総額至上主義、インフレ期待崇拝への対抗である。

これまで、金融市場は、こうしたウネリにやや鈍感であった。しかし、今後は、そのウネリを、ゆっくりではあろうが、着実に実感していくことになるだろう。株式市場や不動産市場におけるバブル的な動きには警戒を強めていかなくてはならない。

 

以 上
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