2006年04月07日

白川 浩道
賃金・物価にスパイラル的上昇の可能性



 4月3日に公表された3月日銀短観の結果で最も注目されるのは、雇用人員判断DI(「過剰」マイナス「不足」)の悪化である。全規模ベースでみた場合、製造業では、−1から−5へ、非製造業では、−7から−9にそれぞれ下落した。製造業では、一般機械、電気機械、精密機械などで、非製造業では、情報サービス、対事業所・個人サービスなどで、DIの悪化が顕著である。景気が高水準横這い状態にある中で、企業の人手不足感は、資産バブル期の中期にあたる1988年前半程度のそれにまで強まっている。

 3月日銀短観で確認された、こうした労働市場需給の引き締りは、循環的なものというよりも、趨勢的なものである可能性が高い。なぜなら、有効求人の非充足率(月間有効求人のうち、就職が決まらなかった割合)が一貫して上昇基調にあるからである。企業の人手不足は構造問題になりつつある。

 現状では、企業の合理化努力による生産性の上昇や臨時雇用の拡大によって賃金インフレは顕在化していないが、潜在的な賃金上昇圧力はかなり高まっていると判断される。

 人手不足に直面する企業が、実際に、賃金・給与水準の引き上げに踏み切るかどうかは、[1]国内需要、特に個人消費が今後も堅調に推移するかどうか、[2]その結果、小売・サービス業における販売価格引き上げが可能かどうか、に依存している。簡単に言えば、個人消費の回復が継続すれば、賃金・物価のスパイラル的な上昇が起こる可能性が高いということである。

 こうした観点から、3月日銀短観の結果を改めて見直すと、小売、サービス、飲食店・宿泊業では、業況判断DIに目立った改善はみられていないが、販売価格判断DIは、依然としてマイナスの領域(「下落」超)にはあるものの、緩やかな改善を継続させている。個人消費の回復が長期化する中で、消費関連企業の価格支配力が、徐々にではあるが、着実に回復している姿がみてとれると言えよう。

 株価上昇による資産効果を勘案した場合、個人消費は、夏前から再加速する可能性が高い。我々とすれば、こうした中で、年後半における賃金プッシュ・インフレのリスクをより強く意識して行かざるを得ないだろう。

 

以 上
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