2006年04月26日

白川 浩道
「福・福」で政策正常化



 衆議院・千葉7区補選での民主党勝利や対アジア外交の行き詰まり等を受けて、福田政権誕生の可能性が高まってきた。

 仮に、福田政権が誕生した場合、安倍政権に比べて、改革派官僚の発言力が強まるものと予想される。小泉政権が行ってきた「ジャブジャブの金融緩和、増税先送り」といった経済政策に対する揺り戻しが生じるということである。

 ここで言う、改革派官僚とは、現下の政策運営に否定的な「正常化派」である。「金融政策と税制の同時的な正常化(利上げと増税)」を模索する一派である。

 従って、福田政権が誕生すれば、金融政策の正常化を目指す福井日銀には追い風が吹くことになる。ゼロ金利解除に続く、段階的な利上げを決定しやすくなるわけだ。「福田首相・福井総裁」コンビの下で予想外に経済政策の正常化が進むシナリオを視野に入れなくてはならない。

 重要なことは、日銀に「ジャブジャブ」の資金供給を継続させる一方、歳出の削減によって財政赤字を徐々に減らして行こうとする、これまでの経済政策には綻び(ほころび)が見え始めてきている、という指摘があることである。

 そこにはいくつかの論点がある。

 第1には、最近注目を浴びている経済格差の拡大である。業種、地域、商品などにおいて、成長している先とそうでない先の格差が拡大しつつあるということである。その背後では、個人の所得格差が拡大する傾向にある。こうした経済格差の拡大は、政府の歳出削減を日銀によるジャブジャブの資金供給によって補おうとした経済政策の副作用と言える。東海地区と北海道地区の経済格差はもはや埋めがたいところまで来ているが、それをもたらしたのが、現下の経済政策である。為替円安誘導によって輸出を大きく刺激したが、公共事業削減によって、同事業に依存度の高い地域の経済を疲弊させた。

 第2に、為替相場の円安誘導には成功したが、その結果、対外不均衡(日本にとっては経常黒字)を累増させ、将来の米ドル相場下落(円高)リスクを拡大させた。あるいは、将来の保護貿易主義台頭の火種を作ったとも言える。その意味では、日本経済の長期的な安定成長の基盤を弱めてしまったとの批判も可能である。日本の輸出産業は円安による利益拡大という恩恵をしばらく享受できたが、今後は、円高リスクを気にしながら、防衛的な経営姿勢に終始しなければいけなくなる可能性が高い。

 第3に、超低金利政策によって節度ある財政政策運営を遅らせた。超低金利時代が長期化したことで、政府債務残高の拡大にもかかわらず、国債費の目立った増加を抑制できたが、その結果、危機感が生まれず、抜本的な税制改革が先延ばしとなり、課税ベースの強化も成し得ていない。景気がひとたび循環的に減速過程に入れば、国民の財政不安が再び噴出する可能性が高い。

 改革派の官僚は、現下の政策ミックスのこうした弊害を既に見抜いており、政策を正常化するチャンスをうかがっている。彼らは、福田政権の誕生によってそのチャンスが膨らむ、と考えているようである。

 日銀は、28日公表の展望リポートで07年度のコアCPI見通しを公表するが、同見通しを+0.8ないし+0.9%とする一方、「予想されるCPI前年比プラス幅の拡大に応じてコールレートの水準調整を行う」という姿勢を明確に打ち出して来るであろう。来年にかけての連続的な利上げを金融市場に織り込ませるためである。日銀による「金融政策正常化必要論」は、福田政権誕生を見越したものとなるであろう。

 

以 上
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