2006年11月01日

白川 浩道
11月は株価下落に注意


 11月は株価の下落に注意したい。7月下旬以降、株価は世界的に上昇トレンドにある。日本株も欧米株には出遅れたものの、9月下旬からはキャッチアップする動きをみせている。しかし、7月下旬から始まった株価の上昇トレンドは終盤に差し掛かっている可能性がある。

 理由は3つある。第1に、世界的な金融引き締め懸念、つまり利上げ懸念が一気に拡大する可能性がある。第2に、日本のマクロ経済データの悪化が進む可能性がある。第3に、外国人の日本の構造改革に対する失望感が強まる可能性がある。

 まず、世界的な金融引き締めである。米国では、住宅投資の減速と原油安によるインフレ圧力沈静化を受けて、2004年6月以来、2年以上続いた利上げ局面が終了するとの見方が有力であった。しかし、ここに来て、利上げが長引く可能性が出てきている。雇用環境が引き続き良好で、賃金が下がらないからである。米国の雇用環境が良好なのは、これまでの利上げのマイナス・インパクトが建設や不動産など一部の業種に限られているためだが、11月7日の中間選挙で共和党が大敗し政治的な不安定性が増さない限り、賃金インフレの抑制を目的にした利上げが再開される可能性がある。

 欧州では、エネルギー価格の下落を受けてインフレ率はある程度落ちいてきたものの、製造業、非製造業を問わず、景況感は高止まりしており、景気循環的には引き続き拡大局面にある。このため、さらなる金融引き締めが正当化される環境にある。

 日本については、村上ファンド問題からの立ち直りをみせている日銀が早期の追加利上げに前向きである。日本の場合、消費者物価の前年比は+0.2%とごく小幅のプラスでしかなく、さらに、今後、ガソリンや灯油の価格が下がれば、前年割れに逆戻りする可能性すらある。それにもかかわらず、日銀が追加利上げに前向きなのは、地価や不動産価格の上昇を懸念しているためである。

 第2の日本のマクロ経済データであるが、11月14日公表の7-9月期GDPは日本の景気が再び弱くなってきていることを示す内容になりそうである。7-9月期は天候不順もあって、個人消費の鈍化が顕著である。自動車、衣料品、飲食、通信などが弱い。4-6月期に年率で2%伸びた個人消費は7-9月期にはマイナス成長になった可能性が高い。

 個人消費はGDPの6割を占める項目であり、その成長鈍化は致命的である。日本の場合、企業が収益維持を優先するため、個人の給与や所得が伸び悩むという構造的な問題を抱えている。個人消費が息切れしてきていることは、日本経済の完全復活は遠いとの連想を招くため、株式市場にとって悪材料になる。

 最後に、外国人の日本の構造改革に対する失望感が強まる可能性であるが、その決定打になるのは、郵政民営化反対造反組の自民党復党と多重債務者救済であろう。自民党が郵政民営化反対造反組の復党を認めるのは、金融構造改革に替わって、教育改革と国家安全保障が政府の優先課題になるからである。さらに、消費者金融問題に絡んで多重債務者の救済措置を導入せざるを得ないが、そこでは、政府系金融機関の融資が活用されそうである。郵政民営化と政府系金融機関の統廃合といった、「金の流れをかえる」構造改革は後退の憂き目に会いそうだ。そうなれば、改革好きの外人は日本株の投資姿勢を修正するに可能性がある。

 

以 上
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