2006年11月20日

白川 浩道
日銀の追加利上げで外人の日本株離れが加速


 日銀は、早ければ、12月19日にも、7月のゼロ金利解除に続く、追加利上げに踏み切る公算にある。仮に追加利上げとなれば、政策金利である翌日物コールレートは0.5%に引き上げられるが、金利が0.5%という水準に戻るのはなんと1997年秋以来である。1997年秋と言えば、北海道拓殖銀行や山一證券の経営破綻が相次ぐことで始まった一連の金融危機の直前である。

 つまり、日銀による追加利上げは、仮にそれが行われた場合、日本経済が1997年終わり頃から始まった金融危機を乗り切ったことの証し、とも言えるエポックになる。その意味では喜ばしいことであり、日本経済を見る海外投資家の目が一段と前向きなものになるかもしれない。

 しかし、現実は甘くない。今この局面で日銀が追加利上げに踏み切った場合、海外投資家の日本経済を見る目は再び厳しいものになる可能性が高い。最悪の場合、日本市場から資金を引き揚げてしまうことも十分にあり得る。その結果、株価が大きく下落するリスクもある。

 なぜ、日本経済が立ち直ったことの証しとなるようなエポックにもかかわらず、外人は日本株離れを起こしてしまうのか。それは、日銀の追加利上げによって、外人が「日本は低成長に甘んじる国」という印象を強く持つからである。

 日本経済の最大の問題が高齢化と国の膨大な借金であることは周知の事実である。金融システムが健全になった、元に戻った、からと言って、日本経済が完全にまともになったわけではない。GDPの150%にも達する国の借金と急速に進展する高齢化の下でさらなる悪化が予想される年金・医療財政。この問題を解決するには、経済成長率の大幅引上げが不可欠である。要するに金融システムを安定化させただけでは十分ではなく、経済が速い速度で成長することがどうしても必要なのである。これこそが、安倍政権の掲げる「成長なくして財政再建なし」である。

 日銀の追加利上げは、日本経済が必要としている高成長の芽を摘んでしまう。足元の国内景気には、賃金の伸び悩みを背景に個人消費が減速するという翳り(かげり)がみえ始めており、小売やサービス業の中小企業では業績が悪化している。そんな状態で金利を引き上げたら、中小企業の業績はさらに悪化するとともに、そこに融資をしている銀行の業績も悪化する。しかも、運の悪いことに、ガソリン価格の下落を受けて、物価が軟化している。物価が軟化している中で利上げを決めたら、「日銀はデフレを望ましいと思っている」と受け取られることだろう。

 高い経済成長によって財政再建を達成するという政策目標が看板倒れになれば、外人は、「日本ではいずれ増税が行われる」と考えるだろう。増税で景気が良くなると考える投資家などいない。ということは、日本株は売られるのである。筆者は日銀による追加利上げが先送りされることを望む。

 

以 上
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