2006年12月19日

白川 浩道
足元の株価上昇について行くのは危険


 前号では、 [1] 日銀が、早ければ12月19日にも、7月のゼロ金利解除に続く、追加利上げに踏み切る可能性がある、 [2] その場合、海外投資家の日本経済を見る目が厳しくなり、株価が大きく下落するリスクがある、と指摘した。

 幸い日銀は、12月19日の金融政策決定会合で追加利上げを決定することを見送った。夏場以降、個人消費が冴えない動きとなっていることに加え、消費者物価のプラス幅の緩やかな縮小を受けて政府のデフレ脱却宣言が遅れており、景気や物価の順調な回復を主張しにくくなったためである。

 さらに、地方景気の鈍化が徐々に顕在化する中で、安倍政権から「追加利上げを見送るべき」という強力な圧力がかかったことも影響したとみられる。

 首都圏では、建設投資が好調であるほか、大企業の業績好調を受け、各種企業向けサービス業も伸びており、雇用が拡大基調を続けている。その結果、個人消費もそこそこ堅調である。しかし、地方では雇用の伸びが明らかに鈍化しており、個人消費は急減速している。緊縮財政が常態化する中で、もはや、円安と輸出増加だけでは地方景気を支えられなくなっている。7−9月期の地域別労働調査によれば、就業人口が前年比で増加しているのは、首都圏のみといった状況であり、今回の景気回復局面でずっとプラス成長を維持してきた愛知県ですらマイナスに転じている。

 安倍政権には小泉政権における郵政民営化のような経済構造改革の目玉がない上、郵政民営化に反対した造反組の復党が政治改革後退というマイナス・イメージをもたらしている。今後、有権者の政権支持率が低下の一途を辿る可能性が高く、そうした中での景気情勢悪化は、来年夏に参院選を控えた政権に致命的なダメージとなる。従って、安倍政権の日銀に対する圧力は強まることはあっても、弱まることはない。

 政府・与党が日銀の追加利上げを嫌うのは、追加利上げが地方銀行を弱らせる可能性があるからである。不良債権処理に目処をつけたメガバンクは、規模の経済をバックに地方への攻勢をかけつつあり、地方銀行の多くは守勢に立たされている。そこに新たな逆風としてリスク管理の厳格化といった行政指導が強まりつつある。不動産や海外の社債に絡むような資産への投資は以前よりも厳しいチェックを受ける。

 メガバンクの攻勢と監督強化という逆風の中で、日銀が追加利上げをしたらどうなるか。預金金利の上昇というコスト増加に耐えられない地銀は再編や合併の道を選ばざるを得ない。そうなれば、不良債権があぶりだされ、地方企業の一部は倒産に追い込まれるだろう。

 「地方景気が再び回復軌道に戻るまで追加利上げはお預け」というのが与党の基本的な考え方であろう。しかし、地方景気回復の展望は当面開けず、その結果、与党は日銀による追加利上げに永遠に反対することになる。

 問題は、日銀が政府・与党の地方重視路線にどこまで歩調を合わせられるかであるが、残念ながら、日銀と政府・与党の共同歩調は長続きしないと予想される。

 日銀の目は、地方景気ではなく、基本的には首都圏や株式市場の方を向いている。つまり、日銀が気にするのは、地方景気の悪さといった景気実態ではなく、首都圏を中心とした不動産市場の加熱、低金利長期化による株価バブル発生のリスクなど、いわばマネーの拡大である。景気実態が悪くとも、マネーの拡大を嫌えば、日銀は追加利上げに動くだろう。その結果、行過ぎたマネーの拡大は沈静化するだろうが、地方景気はさらに疲弊する可能性が高い。

 12月は追加利上げが見送られたが、来年1−3月のどこかで追加利上げが行われる可能性は十分にある。足元では株価が堅調であるが、年明け以降は、地方景気悪化→個人消費低迷継続といった懸念を背景に、株価が下落するリスクがある。注意したい。

 

以 上
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