2007年02月06日

白川 浩道
デフレ脱却はまだ見えない


 前回のリポートでは、
   2007年の株式市場に楽観は禁物である、
 と書いた。
   デフレ脱却が遅れていること、
   経済・金融構造改革期待が後退していること、
   日中・日韓関係の悪化といった地政学的なリスクが存在していること、
 がその主な理由である。

 さて、今回は、デフレ脱却の問題について若干のアップデートをしておこう。

 そもそも、デフレ脱却とは何か。
 それは、消費需要が強くなって物価の下落が止まることである。
 重要なことは、あくまで、物が売れて物価が上がることである。
 原油や素材品などの生産コストが上昇して物価が上昇しても、デフレ脱却とは言えない。
 消費需要が拡大しない限り、生産コストが下落すれば、物価は再び下がる可能性が高いからである。

 従って、ガソリン、灯油など石油製品の価格や電力・ガス料金が上昇して消費者物価がプラスに転じても、デフレ脱却とは呼ばないし、政府がデフレ脱却宣言をすることもない。

 このように考えると、デフレ脱却の鍵を握るのは、ごく当たり前であるが、個人消費の回復力である。個人消費が持続的に拡大し、小売業やサービス業で物価やサービス価格を引き上げられるようになれば、デフレ終息を宣言することが可能になる。

 しかし、残念ながら、個人消費の持続的な拡大を予想することは、当面、困難である。
 最大の理由は、非製造業(あるいはサービス業)の労働生産性に改善がみられないこと、である。
 驚くべきことであるが、非製造業の1人当たり付加価値生産の伸びは今回の景気回復局面でも殆どゼロである。これでは、非製造業の1人当たり賃金は上昇せず、結果として、個人部門全体の所得も増えてこない。
 個人消費が持続的に拡大し、デフレから脱却する、というシナリオも描けない。

 製造業は、2000年の世界的なITバブル崩壊を受けて、合理化を加速させ、人件費を大幅に削減し、労働生産性も改善させた。世界景気の回復と円安といった追い風が途絶えない限り、製造業の賃金水準は緩やかに上昇する可能性が高い。
 しかし、非製造業では、これまで国際化に晒されてこなかった分、合理化が遅れているほか、政府部門の肥大化になかなかメスが入らなかったため、非効率性が温存されてきた。さらに、医療など規制の多い分野では新たなビジネスも生まれにくく、旧態依然とした産業構造からの脱却が図れていない。これでは、非製造業の労働生産性が伸びないのも当然であり、小売、サービスといった非製造業は、政府の財政緊縮化路線が継続する下でジリ貧を免れまい。

 非製造業の付加価値生産と利益率が上昇し、その結果、非製造業の人件費が下げ止まるまでには、向こう2〜3年は要するであろう。
 すなわち、向こう2〜3年は、個人消費の持続的拡大は視野に入らず、デフレからの脱却も困難とみられる。

 株式市場における“第一の重し”が今年中に解消されることは期待できないのが実情である。

 

以 上
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