2007年03月05日

白川 浩道
世界的な株価下落の連鎖は簡単には終息しない


 筆者は、昨年秋以来、日本の株式市場の先行きに悲観的な見方を示してきた。昨年11月下旬以降、
日銀の追加利上げで外人の日本株離れが加速」(11月20日)、
足元の株価上昇について行くのは危険」(12月19日)、
2007年の株式市場に楽観は禁物」(1月9日)、
デフレ脱却はまだ見えない」(2月6日)、と連続的に書いてきた。

 筆者が日本株の先行きに悲観的になった背景を改めて指摘すれば、

  1. 日本経済の足腰がしっかりする前に日銀が追加利上げを急ぐリスクが見えたこと、
  2. 現政権下では経済構造改革がペース・ダウンする可能性が高いこと、
  3. 極東アジアの地政学的リスクの高まりが嫌気される可能性があること、
である。

 果たして日銀は2月21日の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切ってしまった。 個人消費の回復が確認されず、地方景気が再び悪化傾向にあるにもかかわらず、である。 その結果、政府の長年の悲願であった「日本経済のデフレからの脱却」が見えなくなった。 これは、株式市場にとって明らかにマイナス材料である。

 さらに、今回の日銀の追加利上げは世界的な株安の連鎖を招いた。 足元で起きた世界的な株価下落については、中東情勢の悪化、原油価格の再上昇、中国の金融引き締め強化懸念、米国景気減速観測など、様々な要因が指摘されている。 しかし、世界的な株安の震源地は2月21日の日銀追加利上げである。

 日銀の追加利上げが世界的な株価下落を招いたのは、日銀が国内個人消費と物価の情勢を無視したためである。 より単純に言えば、日銀は、今回の利上げを通じて、市場に 「景気に関係なく、金利を引き上げていく」というメッセージを送った。 これまで流動性供給の主体であった日銀が「流動性を縮小させる」と高らかに宣言したことを受けて、国際金融市場が動揺してしまったのである。

 実際、今回の世界的な株価下落の発端は、2月20日のインド株の下落であったと判断される。 インド株は、2月21日の日銀金融政策決定会合における追加利上げのリスクを織り込み始めた2月20日に下落を始め、日銀の追加利上げ決定を受けて、23日まで4日続落、5%強も下げた。 さらに翌週になって、中国株が大きく下落し、それが先進国の株式市場に飛び火した。インド株の下落によってヘッジファンド等のリスク許容度が低下していたところに、中東情勢不安定化、中国資産バブルの崩壊懸念、米国景気減速観測など、立て続けに悪い材料が出たというわけである。

 今回の世界的な株価下落の特徴点は、BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の株価の下落率が相対的に大きいことである。 日本を除いた先進国株価の直近高値からの下落率は5〜6%であるが、BRICs諸国の株価の下落率は7〜11%となっている(3月2日現在)。

 先行きについては、BRICs株価の下落が今しばらくは継続する可能性が高い。 現在の水準から、場合によっては、さらに2割程度下落する可能性も否定できない。 足元では、市場参加者への心理的な影響が主体であるが、今後は、より本質的な側面からBRICs株価の割高感が注目されるとみられるからである。

 なぜか?その理由は、日銀の金融政策引き締め措置によって、国際商品市況が大きく崩れる可能性が高いからである。 歴史的にみると、日銀が供給する流動性(マネタリー・ベース)の縮小は時間差を置いて、国際商品市況の下落に繋がっている。 今回の日銀の追加利上げによって国際商品市況は2割程度下げる可能性があり、そうなると、国際商品市況上昇の恩恵を得てきたBRICssの株価も下落する筋合いにある。

 BRICs諸国の株価がさらに下落した場合、相対的に下落率が小幅で済むにせよ、先進国の株価も下落基調を辿ると考えておかなくてはならないだろう。 日経平均の16000円割れも視野に入れておかなくてはならない。

 このように、日銀の追加利上げをトリガーとした、

国際商品市況の下落
BRICs株価の下落
世界的なリスク・マネーの縮小
先進国株価の下落、
といった負の連鎖は、容易には終息しそうにない。

 直感的に考えれば、こうした状況で、日銀が更なる利上げを決定するのは困難なようにみえる。 しかし、日銀は、今後も、淡々と利上げを図ってくるだろう。 なぜなら、「世界の金余り状態を是正し、世界的な資産バブルの芽を摘むこと」こそ、日銀がそもそも目指していることだからである。 国内不動産市場に価格上昇のモメンタムがついている以上、日銀は、徐々に金利を上げるというシナリオを取り下げられない。 株式投資には当面慎重でなくてはならないと考えられる。

 

以 上
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