2007年05月28日

白川 浩道
日本株は再上昇するか?


 日本株の出遅れ(アンダーパフォーマンス)がなかなか是正されない。日本株はこのまま一進一退を繰り返すのであろうか。その結果、昨年半ば以降の“世界最弱市場”の汚名を返上することはもはや不可能なのか?

 筆者は、昨年秋以降、一貫して日本株に対して弱気の見方をしてきた。外国人が期待していたデフレ脱却に不透明感が出てきたこと、そうした状況で日銀が金融政策を引き締める姿勢を打ち出したこと、政権交代を境に経済構造改革が後退したこと、表面的にはアジア外交がうまく行っているかのようにみえるが、憲法改正論議を受けて日本を取り巻く地政学的リスクが増大していること、などがその背景である。

 残念ながら、これらのマイナス材料は足元でも殆ど変わっていないか、ないしは、さらにやや悪化しているとみられる。その意味では、日本株に対する姿勢は引き続き、基本的に弱気を続けざるを得まい。

 しかし、短期的には、日本株の再上昇局面が近づいてきたようにみえる。その理由は、製造業の生産・出荷に代表される循環的な景気指標が足元の“踊り場的な状況”を抜け出し、新たな回復過程に入る可能性が高まっているからである。背景となるのは、米国における企業設備投資の再加速である。

 国内製造業の生産活動水準は、昨年12月をピークに減少している。今年3月までの減少率は累積で1.8%となっており、前年比増加率も、昨年10月の7.5%増をピークに、3月は+2.0%まで低下した。こうした製造業の生産活動の減速は、米国で企業設備投資が急激に減速したことがその基本的な背景となっている。米国の企業設備投資が再び回復すれば、生産活動も回復する筋合いにあるのだ。

 無論、米国の企業設備投資が順調に回復しないリスクもある。米国企業の間でM&A志向が強まっているからである。米国企業のM&A志向は、“激化する国際競争の下で生き残っていくためには、買収や合併を通じて市場の占有度を引き上げ、価格支配力を高めるしかない”という危機感の表れにほかならない。そして、M&Aに資金をつぎ込むために設備投資や人件費を抑制しようという動きが米国企業の間で見られ始めている。早い話、設備投資をするよりも、他の会社を丸ごと買った方が得なのではないか、ということだ。

 ただ、循環的には、米国の企業設備投資が年央頃から上向く可能性が高いとみておくべきだろう。ドル安や欧州景気回復を背景に米国の輸出は拡大基調にあり、製造業の機械需要が盛り返してきているからである。全米購買者協会の製造業調査をみても、足元では、機械の新規受注が回復ピッチを速めている。頼もしい限りだ。

 日本株のアンダーパフォーマンスをもたらしている構造要因は簡単には消えない。また、世界におけるM&Aの流れも日本株にはマイナスである。日本経済は、その本質において「物作り経済」であり、M&Aのような金融活動ではなく、製造業生産といった実物経済が回復しない限り、回復しないからだ。日本株が世界から取り残される状況は今後も続く。しかし、である。短期的には、そう、例えば、向こう6〜9ヶ月くらいは、米国の設備投資の回復を受けて、世界中の物作りが再加速する。そして、持続性はなかろうが、日本株も少しは上昇するはずのである。

 

以 上
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