2007年06月27日

白川 浩道
円安は簡単には止まらない?



 先週、米国(ニューヨーク、ボストン)に出張、ヘッジファンド等10数社を訪問し、日本の景気や為替相場、金利の見通しに関する意見交換を行った。

 最も印象的であったのは、円相場の上昇を予想する向きが極めて少なく、筆者が示したシナリオ(年後半における円相場の循環的な上昇)に興味を示す声が殆ど聞かれなかったことである。ファンド筋を中心に、円弱気派が如何に多いかを改めて痛感させられた米国出張であった。


 米国における(欧州も恐らくそうであると思うが)円弱気派の論理をまとめるとすれば、以下のようになる。

  1. 米ドルとユーロが世界の2大通貨圏を形成しつつある中で、円の決済通貨、準備通貨としての地位は全くと言ってよいほど向上しておらず、中長期的にみて円を保有する意義は小さい。また、第3の通貨は、円ではなく、「上昇基調にある中国人民元」とみておく必要がある。

  2. 日本経済の中長期的な成長力は十分に回復したと言えず、経済成長との関係から円を買う理由に乏しい。経済成長という観点からみた場合、ダイナミズムのあるアジア、ラテン・アメリカ、中東欧などの新興市場国の通貨の方が面白い。

  3. 福井総裁の投資ファンド資金拠出問題や前回利上げ時のゴタゴタなど、日銀の独立性低下を示唆する事象が多い。このため、日本の金利水準正常化(景気の安定化に伴って超低金利を是正していくこと)がなかなか進まない可能性があり、円相場に強気化できない。

  4. 日本国内の個人投資家は、上記2、3を共有しているとみられる。国際的な資金の流れに大きな影響力を有する日本の個人投資家が"日本経済の将来を憂慮すると同時に日銀に信頼を置いていない"以上、円相場の上昇を予想しづらい。


 こうした円弱気派の論理を聞いていると、円相場が上昇トレンドに入ることは、当面、かなり困難であると考えざるを得ない。従って、年後半の円相場の展開については、以下のような考え方で臨む必要があろう。

  1. 米国の製造業関連指標は年後半に米国の企業設備投資が上向く可能性を示唆しており、従って、日本の輸出・生産・設備投資も夏場以降には再加速する可能性が高い。このため、夏以降、円相場が強含む局面がみられよう。

  2. もっとも、円の上昇幅は小幅なものに止まる可能性が高い。年内に115円を下回るような円高・ドル安が生じるとは思えない。第1に、安倍政権が経済構造改革を再加速させる可能性は低い。第2に、日銀が、短期間での連続的な利上げを示唆するような行動に出るとは考えにくい。日銀は円の信認回復にさほど積極的ではない。

  3. 短期的には、日銀が7月12日の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切った場合、市場にとってややサプライズとなるため、円高が急激に進む可能性を否定できない。しかし、年内に再度利上げが行われるという見方が強まらない限り、夏場のうちに115円に向かうような円高が生じる可能性は低い。

  4. 逆に、日銀による追加利上げが7、8月ともに見送られる公算が強まった場合、円相場は7月中にも127〜128円まで一気に下落する可能性がある。


 要するに、円相場を対米ドルでみた場合、年内は、116円程度を高値とし、局面によっては、127〜128円までの下落も十分にあるということである。この場合、対ユーロでは、173円程度まで下落するということである。現在の円安水準から投資しても、うまくすれば為替差益を見込めるため、外貨建て資産投資にはまだ妙味があるわけだ。他方で、海外旅行など海外で消費をする場合には、円相場の下落傾向は痛い。特に欧州に出かけた場合、全てのものが高いと感じられるはずである。

 

以 上
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