2007年07月17日

白川 浩道
参院選での与党大敗は株価上昇要因?


 安倍政権は昨年9月26日に発足した。参議院選挙が予定されている月末には、政権発足後およそ10ヶ月が経過する。

 昨年9月26日以降、東証株価指数は14%弱上昇した(7月17日終値)。年率にすれば、17%程度の上昇であり、一見、そう悪くない数字に見える。しかしこの間、米国株(ニューヨーク・ダウ)は20%強、欧州株(ドイツ・DAX)は40%弱、BRICs諸国の株は平均的には50%強、それぞれ上昇しており、日本株の相対的なパフォーマンスの悪さが目立っている。

 日本株の相対的なパフォーマンスの悪さは何を意味するのであろうか。日本経済の回復力が依然として乏しいからであろうか。答えはノーである。昨年10−12月期と今年1−3月期の2四半期における実質GDPの平均成長率(年率)は、日本が4.3%と、米国の1.6%、ユーロ圏の3%強を上回った。経済成長のスピードという観点からみた場合、少なくとも先進国株価における日本株の相対的な弱さは説明できない。

 それでは日本の株価に割高感があるのであろうか。この問についても、答えはどうやらノーのようだ。

 まず、東証1部の予想PER(株価収益率)は、安倍政権発足時には19倍台の半ばであったが、足元も約20倍で安定している。さらに、この20倍程度という数字も過大である可能性がある。なぜなら、日銀の短観調査などで示される企業の想定為替レート(07年度)は対ドルで114円台と実際の為替レートに比べてかなり円高に設定されており、今後、企業利益の見通しが全体として上ぶれる可能性が極めて高いからである。

 さらに、欧米市場のPERの動きはまちまちであり、日本株の割高感が強まっているという決定的な証拠は得られない。すなわち、ニューヨーク・ダウの場合には、PERが昨年9月末の22倍強から足元では18.5倍程度にまで下落しているが、ドイツのDAX指数の場合、PERは昨年9月末の13倍程度から足元では14.5倍にまで上昇している。

 従って、日本株の相対的なパフォーマンスの弱さについては、景気や企業利益といったファンダメンタルズ以外の要素に起因しているとみるべきであり、そうした要素として最も有力なのは、現政権の経済政策運営に関する不信感ではないだろうか。

 現政権における政策運営の方向性を端的に表すとすれば、[1]社会的安定性の確保(再チャレンジ、所得格差是正、国内企業保護などを重視)、[2]財政・金融政策の正常化(増税による財政再建と日銀による段階的な利上げを容認)、[3]金融機関の再規制(投資家保護を目的とした金融取引の監視強化)、の3点を指摘できる。こうした政策運営の方向性は、日本的社会主義の立ち場からは受け入れやすいものであり、多くの国民も、過去1年程度、無意識のうちに容認してきたと考えられるが、資本主義を具現した株式市場にとってはむしろマイナスに作用してきた面が大きい。

 参院選に関しては、社会保険庁問題などから与党の大敗を予想する向きがあるが、与党大敗となった場合、“新政権”が、大敗の直接的な原因とは無関係に現政権の政策運営の方向性を軌道修正しようとする可能性があり、この点が今後の最大の焦点となる。

 特に、参院選後、小泉前首相とその腹心の1人である竹中前総務大臣の政策運営に対する影響力が増すかどうかに、大いに注目しなくてはならない。より具体的には、“新政権”において、[1]増税先延ばしと公的社会保障制度の縮小、[2]海外企業による国内企業買収の奨励、[3]日銀が持つ段階的利上げシナリオの封印、[4]行過ぎた投資家保護の見直し、などがセットで示された場合には、株式市場は強く反応し、株価が急騰する可能性を否定できない。

 与党の参院選大敗と小泉イズムの復活が株価の潮目を変えるかもしれない。

 

以 上
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