2007年07月30日

白川 浩道
再び狂い始めた株価のシナリオ


 昨日の参院選では与党が大敗した。筆者は、「仮に与党の大敗が小泉待望論につながり、結果として、財政構造改革の推進と市場主義の復活をもたらせば、株式市場にとってプラスに作用する」と考えてきた。つまり、与党大敗→いわゆる小泉イズム復活→株価上昇、の可能性をみてきたわけだ。

 しかし、どうやら、そうした読みは甘かったようである。参院選での与党大敗は、小泉イズムの復活どころか、その“終わり”をもたらす可能性があり、株価の低迷も長引きそうな状況にある。株価のシナリオは再び狂い始めた。

 国民は、今回の選挙で、「公共事業を削減し、地方向け補助金を抑制しつつ、低金利政策で株価を支えるという小泉政権の政策は、所得格差や大都市・地方格差を拡大させ、社会的な安定性を損なった悪政であった」という審判を下したとも言える。他方で、民主党のマニフェストには、新たな児童手当の導入、教育支出の大幅増加、農業活性化による地方再生、中小企業支援、パートタイマーの待遇改善、最低賃金の引き上げ、などがうたわれている。“小さな政府+市場主義”という小泉路線が否定されるとともに、“優しい政府+新社会主義”への転換の必要性が前面に押し出されている。複数のスキャンダルという与党への逆風を割り引く必要はあるにせよ、有権者の多くがそうした民主党の考え方に同調したことは紛れもない事実である。

 今回の参院選を経て、振り子は再び反対の方向に振れ始めたとみるべきだろう。“弱肉強食的な自由競争型あるいは市場メカニズム優先型の社会”から、“様々な意味で格差が小さく、安定を優先した社会”へ再び回帰しようとする力が本格的に働き始めたようである。安倍首相の最大の関心が憲法改正であるとみられる中で、改造後の内閣は、民主党との距離を縮めていくことになるだろう。今後は与党そのものが民主党の路線に近づいていく可能性が高いということである。

 “優しい政府+新社会主義”への転換は株式市場にどのような影響をもたらすのであろうか。結論から言えば、残念ながらプラスの影響とはなるまい。社会的安定性を確保しようとすること自体が悪いわけではない。しかし、株式市場は、経済のダイナミズムを好む。所得格差の是正に配慮し過ぎることで再び財政の硬直化を招けば、民間経済の発展に支障を来たす。これがグローバル・スタンダードの考え方である。

 内閣改造や与党と民主党の接近度合いなど、見極めるべき材料は多いが、参院選における与党大敗によって日本株の弱さが長引く可能性が出てきた。

 

以 上
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