2007年09月07日

白川 浩道
憂慮される日本株の将来


 米国のサブ・プライム・ローン問題が引き続き世界的に株価の頭を押さえている。米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、公定歩合を引き下げ、銀行に積極的に資金を貸し出すことも表明した。しかし、欧米における金融不安はまだ解消されていない。

 果たしてサブ・プライム・ローン関連の投資で痛手を被った銀行がどこの誰であり、その痛手(運用損)の規模がどのくらいであり、世界景気へのインパクトがどのくらいであるのか、依然としてはっきりしないからである。ブッシュ大統領は住宅ローンの借り手を保護する策を打ち出したが、それだけで株価が上がっていくような状況にはない。

 やはり、欧米銀行の第3四半期の決算状況が明らかになっていく過程で、痛手を被った先があぶり出され、サブ・プライム・ローン焦げ付きによる経済損失の全体像がわかるまで、世界の株価が明確に反転することはなさそうだ。

 しかし、そもそも論として、サブ・プライム・ローン問題を大きな脅威と捉える必要はあまりないだろう。来年終わりに大統領選を控えている米国では、共和党、民主党ともに、景気後退を許容できるはずもなく、いざとなれば、あらゆる策を講じて景気を拡大させようとするはずだからである。サブ・プライム・ローン問題の終息がまだみえていないのは、基本的に銀行決算の時期を迎えていないからに過ぎない。

 より深刻な問題は、日本株の弱さである。この点は、昨年秋から筆者が繰り返し指摘してきた点である。サブ・プライム・ローン問題は、米国政府・中央銀行の対応によって早晩、終息するものとみられ、その結果、世界的に株価が再び上向く可能性が十分にある。だが、そのような中にあっても日本株だけは置き去りにされるリスクがかなりある。

 なぜ、日本株だけが世界的に見放され続けてしまう可能性があるのか?それは、日本株投資にはイディオシンクラティック(idiosyncratic)なリスクがあるからである。イディオシンクラティックとは、固有の、特有のという意味である。つまり、日本株に投資すると、世界的な経済や企業業績の流れと乖離した株価伸び悩みのリスクに晒されてしまう、ということである。

 そうした日本株固有のリスクとは、端的に言えば、“日本的社会主義”の復活である。外国人投資家の多くが最も嫌っているのは、円安や世界景気の回復によってバランスシートのスリム化を達成した日本企業が急激に“内向き”になっていることである。

 ここで言う“内向き”とは、拡大したキャッシュフローを設備投資やM&Aに使わないばかりか、外国資本の流入を排除すべく、業界が株式の持ち合いなどによって自己防衛に走っていることを意味する。過剰債務だ、過剰設備だとわめいていた日本企業は、リストラが終わったとたん、今度は、外国資本に買われないよう、じっと身を潜めようとしているということである。「日本人による、日本人のための企業経営」という視点に重点が置かれているわけで、これでは、日本企業に対する投資が魅力を欠いても無理はない。

 日本企業は今回の循環的な景気回復で史上最高益を挙げたが、これは、世界景気の拡大や円安といった“タナボタ”と、団塊世代の高齢化による人件費の減少がたまたまもたらしたものであり、何らかの前向きな経営革新が行われた結果ではない。

 世界的に競争が激化する中で日本企業に求められているのは、業界の再編や国際的なM&Aによる価格支配力の引き上げである。本来、外国資本を受け入れることは、業界の再編や国際的なM&Aのカタリストになるはずだ。それを真っ向から否定している今の日本企業の姿勢は、“自らジリ貧を待っているようなもの”と外国投資家の目には映るわけである。さらに言えば、そうした日本企業の姿勢を政府・日銀が容認している点も大問題であろう。

 日本企業が経営の抜本的改革を本気で考えない限り、日本株の将来は明るくならないのではないか。憂慮される。

 

以 上
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