2007年10月25日

白川 浩道
終わった株価上昇局面


 前回のノートでは、安倍→福田の政権交代で一時的に株価が上昇する可能性が高い、と書いた。国内政治情勢が最悪期を脱したとみられること、対米関係が改善するとの期待からご祝儀的な買いが入る可能性があるとみられること、を背景として指摘した。実際、日経平均は9月18日の15800円程度から10月11日には17500円弱まで、1ヶ月に満たない短期間に1700円も上昇した。

 しかし、こうした上げ相場はどうやら終わった模様である。政権交代後のほんの1ヶ月も株価の上昇は続かず、さらに、再び上昇基調に入る見込みは小さい。あまりに短期間の上げ相場に心底がっかりさせられたと言うほかにない。

 今後も株価の上昇が望めない、あるいは株価が下落トレンドを辿るかもしれない理由はいくつかあるが、それらの殆どは筆者にとって想定外のものであった。

 第1に、米国サブ・プライム・ローン問題の長期化である。もう少し迅速に問題の処理が行われると思っていたが、予想外に時間がかかっており、市場の信用不安懸念がだらだらと続いている。その1つの背景は、サブ・プライム・ローンという不良債権が複雑な仕組みの証券化商品の中に散りばめられてしまったため、どこの誰が不良債権をどの程度抱えているのか、よくわからなくなり、従って、問題の終わりが見えないのである。その一方で、米国の住宅市場関連データは悪化を続けているから、市場は疑心暗鬼を続けざるを得ない。半殺し状態の長期化は最悪の状況といえよう。

 第2に、ひところ、世間を騒がせたマンションの耐震偽装問題が景気後退要因としてカムバックした。耐震偽装の再発防止を狙った改正建築基準法の施行(要するに建築基準がより厳格化した)により、建築着工がクラッシュしたのである。住宅着工、住宅以外の建築着工ともに7月以降、前年を30%以上下回っており、10月に入っても回復の兆しはみられない。建設財や建設機械の出荷や生産に悪影響が出始めているほか、一部では資金繰りに窮している建設会社もあるようだ。事態の収拾には予想外の時間を喰いそうであり、場合によっては、来年半ばにかけて国内景気が一時的に腰折れる可能性がある。

 第3に、消費税増税論の加速である。与党の保守派は、民主党が「社会保障を維持し、農業や地方さらには中小企業には助成を増やすが、消費税は増税しない」とぶち上げていることへの批判の意味を込めて消費税増税論を正面切って打ち出した。「2007年度中に税体系の見直しを行う」とこれまでに表明してきたことをまじめに実行に移している面もあろう。しかし、タイミングは最悪である。海の向こうの米国では法人税減税論が出ているし、足元の国内景気は建設不況に突入せんとしている。如何に長期的な視点からの大義名分があろうとも、そのような環境で増税を真剣に議論すること自体、外人の目には“異常”と映る。

 株式市場を取り巻く環境は再び急激に悪化している。1ヶ月も上げ相場がもたなかったことは情けない限りであるが、気持ちを切り替えて、再び慎重姿勢で臨みたい。

 

以 上
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