2007年12月02日

白川 浩道
混沌とする次期日銀総裁人事


 日本株にこれといった買い材料がない中で、大手ヘッジ・ファンドなど外人投資家の一部は来年3月下旬に任期が切れる福井日銀総裁の後任人事に高い関心を寄せている。彼らは、「次期日銀総裁が日本経済の新たな発展を予感させるような人物となるならば、日本株は買い」と考えているからである。

 その日銀総裁人事だが、水面下で動き出した模様である。

 一時は解散・総選挙が年明け早々にも行われる可能性もあったため、現福田政権で次期総裁選びを進めることは困難かとみられていたが、民主党のゴタゴタや防衛省問題などもあって総選挙の時期が来夏のサミット後に後ずれする公算が高まり、人選が始動した。

 既に市場関係者の間では共通認識となっているが、次期総裁選びについては参院の第1党である民主党の影響が大きく、本件に関する民主党の意向を読むことは極めて重要だ。

 その民主党は次期日銀総裁にどのような人物を考えているのであろうか。一部には奇をてらった人事を予想する向きもあるが、民主党にそう奇抜なアイデアがあるわけではないだろう。なんと言っても一国の中央銀行総裁という極めて重いポストである。“官僚出身者の天下り的な就任は望ましくない”と言ってみても、現実問題として選択肢は限られている。小沢代表も、“官僚であるからといって頭ごなしに不適任とは言えない”といった趣旨のことを述べている。

 そうであるからといって長く本命視されてきたM副総裁にあっさり収まるのかどうか、これは現時点でははっきりしない。民主党は次期日銀総裁の条件として、金融政策や金融市場に関する造詣が深いことはもちろん、 [1]国際経験が豊富である、 [2]実務派というよりは理論派である、 [3]信頼にたる人物である、といった点を重視している。M副総裁以外にも候補がいないわけではない。

 直感的に考えた場合、このような条件により適合しそうなのは、財務省国際派のトップである財務官経験者や国際金融に精通したマクロ経済学者である。この場合、K元財務官、U元日銀審議委員、Y元日銀副総裁などの名前が浮かんでくる。

 それでもどうもしっくり行かない面がある。残念ながら、彼らは皆、少なくとも現在は金融政策や金融市場から離れたところにいるからである。

 改めて言うまでもないが、足元はサブ・プライム・ローン問題に世界の金融資本市場が動揺しており、平時ではなく、まさに有事である。その有事から距離をおいたところにいる人たちに次期総裁を任せられるのであろうか。個人的には甚だ疑問であると言わざるを得ない。

 現在、金融政策ないし金融市場に極めて近いところに身を置いており、かつ、国際派、理論派というと誰になるのか。1人の有力な候補は某国内最大手証券グループ会長のU氏ではないだろうか。

 日銀総裁を財務省出身者と日銀出身者が独占する時代は既に終わっている。これから数年、国際金融市場はまさに動乱期とも呼べる時代に突入するだろう。米国のサブ・プライム・ローン問題が片付いても、ドルの暴落や中国など新興市場経済のバブル崩壊など、第2、第3の爆弾が破裂する可能性が十分にあるとみておかなくてはならない。

 次期総裁に求められている最も重要な資質はフット・ワークの良さである。日銀総裁というポストはもはや“官僚の頂点”ではなく、“市場関係者の頂点”でなくてはならない。そしてそうした観点から証券界のU氏を次期日銀総裁に任命できれば、日本株に対する世界的な評価は良い方に大きく変わるだろう。

 しかし、日本の政治に同氏を選ぶような“先進性”はない。結局、次期日銀総裁はU氏でもないだろう。

 日銀総裁選びの混沌は当面続きそうである。今は有力候補なしというの実態だ。日本経済と日本の金融・資本市場の発展を考えた先進的、革新的な人事が行われることに期待したい。

 

以 上
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