2008年01月18日

白川 浩道
日銀利下げで資源バブル加速へ


 米国大手銀行の決算が佳境に入った。サブ・プライム・ローン関連損失の拡大を受けて資本増強の動きが広範化している。このため、米国で深刻な金融不安やクレジット・クランチが発生する可能性はかなり低下した。

 しかし、米国景気が後退局面入りの瀬戸際に立たされているという事実は変わらない。住宅価格下落による逆資産効果が本格化するからだ。

 米国の住宅価格は家計所得との対比でみて上昇し過ぎた。ネット・バブルの崩壊とほぼ同時に始まった住宅バブルの下で、米国の住宅価格は平均で60%以上も上昇した。この間、家計1世帯当たりの所得水準は15%程度しか上昇していない。平均住宅価格の家計所得に対する比率は3.5倍から5倍強にも上昇したのである。これが住宅需要減退と住宅バブル崩壊の最大の要因である。

 家計所得が緩やかな伸びを維持したにせよ、同比率がバブル発生前の3.5倍程度まで低下するためには、今後、住宅価格が平均で15〜20%程度下落しなくてはならない。仮に、住宅価格が平均でピークから20%程度下落した場合、米国家計部門の住宅資産価値はおよそ5兆ドル程度(日本円にして500兆円強)も減少する。そして、筆者の推計によれば、5兆ドルにも及ぶ住宅資産価値の減少によって米国個人消費の水準は4%程度押し下げられる。住宅バブル崩壊による逆資産効果はかなり大きい。

 米国景気は長い低成長のトンネルに入った可能性が高く、日本経済がそのマイナス・インパクトから逃れることはできない。今年の日本の実質成長率はゼロ%台まで落ち込むであろう。

 こうした中、日銀は、先月に開始した景気情勢判断の下方修正プロセスを夏場まで継続することになろう。住宅投資→外需・生産→企業利益・設備投資→個人消費、と段階的に景気の判断を下方修正するものと予想される。日銀と同様、政府も景気判断を下方修正していく可能性が高く、政府・日銀ともに、7月上旬の洞爺湖サミットを迎えるまでには、かなり暗い景気判断を下していると予想される。

 政府・日銀が正式に景気判断を下方修正すれば、政治からの圧力は大きく強まる。“糊代”(利下げ余地)がたった0.5%と小さくとも、利下げを求める声を抑えることはかなり困難になると予想される。従って、日銀が政治的な圧力に屈して利下げに踏み込む可能性を否定できない。量的緩和の解除から始まった金利政策正常化のプロセスはストップし、逆回転を始めるかもしれない。

 考えてみれば、世界経済の歴史は、マネー拡大・縮小とバブル生成・崩壊の歴史である。金融緩和によってバブルが発生し、発生したバブルを潰そうと金融引き締めを行うと景気が低迷して、結局、金融緩和を迫られ、その結果、新たなバブルを発生させる。そうした流れの繰り返しである。1990年代終わり以降だけをみても、世界経済では、ネット・バブルと米国を中心とした住宅バブルという2つの大きなバブルに見舞われている。

 米国、欧州に続いて日本も金融緩和に踏み切れば、ネット・バブル、住宅バブルに次ぐ第3のバブルが発生する。それは資源バブルだ。円キャリー・トレードによって資源国に投資するという動きが出てくるということである。

 市場の資源バブル期待をあおるのは、生産性が低い中国の急速な工業化、新興市場国の所得・支出水準の上昇、伸びない資源供給(拡大しない石油開発投資など)、地球温暖化(穀物収穫量の減少)、などの様々な構造要因である。

 しかし、第3のバブルである資源バブルはネット・バブル、住宅バブルに比べて性質が悪い。過去の2つのバブルのような景気刺激効果を持たないばかりか、企業の交易条件(利益マージン)の悪化、ガソリン価格上昇などによる個人の実質所得の低下といった景気下押し圧力をもたらすからである。

 日銀が利下げに踏み込み、資源バブルが加速すれば、年後半以降の景況感は一段と悪化する可能性がある。金融緩和を受けて株価が上がると読むことには慎重でなくてはならない。

 

以 上
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