2008年09月18日

白川 浩道
米国の金融システムの行方


 前号では、「世界的な景気悲観論を鵜呑みにせず、株式市場反転の可能性も視野に入れるべきである」と書いた。

 しかし、米国で再び金融不安が大きく高まっており、世界の株式市場は下落基調を強めている。政府系住宅金融会社(通称、GSE)の経営不安問題に追い討ちをかけるように、大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻、メリル・リンチの身売りなど悪材料が立て続けに噴出しており、市場は混乱の様相を呈している。

 市場が懸念しているのは、米国政府の動きが鈍いことである。米国政府は金融システムの悪化を食い止める意思が本当にあるのか、という疑心暗鬼が強まっている。

 実際、米国当局のGSE支援は腰が引けたものになった。2,000億ドル(20兆円強)という公的資金注入枠を用意しておきながら、第1回目の注入は20億ドルと100分の1に止まる公算である。

 また、リーマン・ブラザーズの破綻については、3月に経営破綻したベア・スターンズのケースと異なり、政府による公的資金の手当てがなかったため、買い手が見つからず、倒産に追い込まれた面がある。

 米国政府は何を考えているのであろうか。金融機関の救済に後ろ向きな姿勢を取り続けることで米国の金融不安が大きく広がり、米国景気は深い後退局面に陥ってしまうのであろうか。

 答えはノーである。ポイントを指摘しておこう。

 まず、米国の政策当局は、誰を救済し、誰を救済しないか、に関する明確な基準を持っている。救済の基準として最も重要なものは、[1]当該金融機関の経営破綻によって金融市場や金融システム全体が機能麻痺に陥るリスクが大きいこと(システミック・リスクが大きいこと)、[2]当該金融機関の経営破綻によって小口投資家(つまり個人)が大きな損失を被り、個人消費あるいは景気全体への悪影響が懸念されること、の2点である。

 米国財務省がリーマン・ブラザーズに対する公的資金注入に消極的であったのは、恐らく[1]の基準を満たさなかったためではないか、と考えられる。

 従って、第2の点として重要なことは、上記の2つの条件を満たす金融機関破綻が生じた場合には、当局の対応は大きく変わる可能性が高い、ということである。具体的には、仮にそうした破綻が起こった場合には、市場関係者の想像を超えた積極的な税金投入が行われる可能性がある。

 そうした破綻とは何か。ストレートに言えば、大手商業銀行(地方銀行、あるいは貯蓄金融機関)の破綻である。規模的には、日本で言えばメガバンク下位の一角が倒れるようなイメージである。

 こうした事態が生じた場合、米国の当局は、健全銀行も含め銀行システムに大々的に公的資金を投入し、不良債権の徹底処理を行わせるだろう。場合によっては、破綻銀行の預金をカバーする預金保険機構の資本増強にも乗り出す可能性がある。

 商業銀行が破綻し、預金者、消費者に直接的に危機が及ぶリスクが高まった場合、政府は手のひらを返したような積極対応に打って出るだろう。世界の株式市場はそうした対応を受けて、底打ちから反転するだろう。ただ、タイミングを読むことは容易ではないことを付け加えておきたい。

 

以 上
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