2000年5月30日

白川 浩道
個人消費本格回復への道は険しい

 人消費の本格回復に対する期待が高まっている。日銀も企画庁も、消費データの改善を心待ちにしている。 「生産の拡大がようやく家計所得の増加に結びついてきた。今後、家計所得が順調に改善すれば、早晩、個人消費も拡大する。」との読みらしい。 筆者も前号では個人消費回復の可能性を指摘した。しかし、データはそうした見方がやや楽観的に過ぎる可能性を示している。 足元から家計所得の伸びがさらに大きく高まる可能性は低く、所得の拡大による消費拡大を展望できる余地は限られているとみられるからである。

 のチャートに示されるとおり、足元の生産の伸びは96年後半から97年央のレベルに匹敵するものであり、相当に高い。 そうした中で、家計所得(現金給与総額*常用雇用指数)の動きをみると、月々の振れはあるが、最近では前年比ゼロ%近傍まで回復した。 家計所得の伸びを97年初めの当時にさかのぼってみると+2%前後である。ここで、家計所得を名目賃金でデフレートすると、足元も97年当時も「実質ゼロ%程度の伸び」となる。 このことは、今後、生産が96、97年当時を大きく超えて伸びを高めない限り、実質家計所得に一段の改善は期待できないことを示している。 言いかえれば、家計所得は、既にかなりいい線まで回復していることになる。 さらに、世界経済が来年スローダウンする可能性を見込めば、家計所得は今やピークに差し掛かっている可能性すらある。

 96、97年の実質個人消費は3%程度増加していた。実質所得が仮にピーク近辺にいるとすれば、 個人消費も早晩ピークアウトする可能性があるが、その前に個人消費はどの程度の回復を示すであろうか。鍵を握るのは、消費者のコンフィデンス、 そしてその結果としての貯蓄率(消費性向)ということになる。日本リサーチ総合研究所が実施しているコンフィデンス調査(生活不安度指数)は、 4月も改善がみられず、横這いであった。98年末のボトムからの回復は予想以上に緩やかなものである。依然、低迷を続ける消費者コンフィデンスには、 少子化、高齢化等を背景とした潜在成長率の低下懸念、税・社会保障負担の高まりに対する不安など、構造的な要因が大きく影響しているとみられる。 経済構造改革の進展や金融機関の機能正常化によって生産性が大きく高まるという期待が生じない限り、将来の展望は開けまい。個人消費本格回復に向けた道はまだまだ険しい。

以 上  
TEL: 03-5297-7311 - FAX: 03-5297-7314
Copyright © 2000 CMD Co., Ltd. All rights reserved.
Prev Index Next