2000年11月15日

白川 浩道
7−9月期GDPはゼロ成長の圏内か?

 7−9月期の成長率はゼロ成長の圏内に止まる可能性が出てきた。個人消費が予想外に弱かった上、頼みの設備投資も、プラス成長とはなるが、GDP全体を大きくプラスの領域にまで引っ張るほどの力はないとみられる。住宅投資、公共投資、外需ともに期待ができないだけに、「テクニカルな回復」後の「足踏み」となる可能性が高い。当社では、7−9月期成長率の暫定予想値を前期比+0.2%増(年率+0.8%)とみている。

 設備投資については、IT関連需要を中心に明らかに拡大トレンドにある。電気機械や鉄鋼といった業種での在庫積み上がり、緩やかな生産調整局面入りといった懸念材料はあるが、今後徐々に回復力を増すものとみられる。他方、消費の回復感の鈍さは、企業の売上や収益が回復している中でも、賃金の抑制基調が大きく変わっていないこと、CPIの下落傾向に変化がなく中長期的な企業収益圧迫懸念、すなわち企業リストラ懸念が消えていないこと、そごう、2生保等相次ぐ大型倒産によりマインドが後退していること、政府部門のバランスシート悪化が将来の税負担増大懸念に繋がっていること、等、構造的な消費抑制要因によるところが大きい。これらの構造的な消費抑制要因が解消されて行かない限り、実質所得の改善といった循環面でのプラス要因は顕現化しにくい状態が続くとみられる。景気は、設備投資に支えられるため「大崩れ」することはないものの、今暫くは回復力には乏しい展開となることが予想される。

 7−9月期のGDP成長率がゼロ成長の圏内に止まり、10−12月期も消費低迷の持続により大きなリバウンドが予想し難いとの見方が広がった場合、最も懸念されるのは株価である。連結ベースのPERは東証1部全銘柄で足元40倍以下と高くなく、基本的に株価の下値は固いとみられるが、年度下期の業績悪化懸念が強まれば、上昇余力も極めて限られたものとなる怖れがある。米国株価の調整局面が続けば、本邦株価も軟調地合いを続ける可能性がある。問題は、日本の場合、株価が一定水準を下回ると、「信用収縮的」な圧力が生じ、それが倒産の増加(あるいはその懸念の高まり)等を通じて、企業や家計のマインドの悪化にさらに繋がっていくという「悪循環」のメカニズムがビルト・インされていることである。日本には、株安によるデフレ・スパイラルのマグニチュードが、欧米に比べて遥かに大きいという特徴がある。政府とすれば、「株価には何とか持ち堪えて欲しい」ところと言える。

 しかし、財政面での景気下支えには限界が見え始めている。大蔵官僚の財政破綻に対する危機感は強く、むしろ「悪い金利上昇」を期待している感すらある。また、国民の財政運営をみる目も厳しくなっている。従来型の財政出動(景気対策)を行えば、貯蓄率の増加から一段の消費減退を招くリスクすらある。政治家がそこまで先を読んでいるか、という問題はあるが、素直に考えれば、成長率鈍化懸念、不安定な株式市場は、日銀に対する風当たりとなって現れると考えるのが筋であろう。

 「8月のゼロ金利解除は失敗であった」との批判はまだ聞こえてこない。これは、政府が最終的にはゼロ金利解除を実質的に容認したためである。企画庁は経済見通しを上方修正し、政府も前年度比少額の補正予算を了解した。0.25%の利上げに目くじらを立てることは、政府としても対策の不備を問われかねないのである。しかし、平均株価が14000円を割ったと同時に、「ゼロ金利解除失敗論」が吹き出すものとみられる。「景気の足腰が十分ではない時点で引締め的な政策に移行したのは誤り」との批判が噴出しよう。日銀は、設備投資の強さを強調しながら事務方総動員で0.25%死守に出るとみられるが、日銀と政治家の激しい攻防は避けられまい。「構造的な消費不況」を巡る波乱の21世紀幕開けに備える覚悟が必要である。

以 上  
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