2009年03月11日

白川 浩道
株式市場に3つの悪材料


 3月9日、日経平均はついに終値でバブル後の最安値を割り込んだ。 こうした中、さすがに株価は下げ過ぎであり、割安感から反発するのではないか、との議論を耳にする。 しかし、割安というだけで株価が反転上昇する可能性は低い。

 株式市場に対して厳しい見方をせざるを得ない背景として、基本的には、以下の3つの悪材料を指摘しなくてはならない。

 第1に、世界の金融システムがいつ安定化するのか、依然として、視界不良である。

 まず、米国当局が大手銀行に対して実施するストレス・テスト(収益環境の一段の悪化を想定した場合の資本不足の最大額の測定)には注意が要る。

 すなわち、透明性が向上することで金融不安が解消に向かう可能性がある反面、自己資本が不足している銀行があぶり出され、優勝劣敗がはっきりすれば、負け組みの銀行が一時的に流動性危機に陥ってしまうシナリオを否定できない。 懸念されるのは、用意されている公的資金の規模が十分ではなく、市場の疑心暗鬼を沈静化できないリスクがあることだ。

 また、中・東欧の経済危機も気になる。 西側欧州諸国の金融機関の中には、中・東欧新興市場経済に対して大きな貸出エクスポージャーを有しているところがあり、同経済の停滞による不良債権の拡大はそれら金融機関の経営を根底から脅かしかねない。

 中・東欧新興市場経済はIMF(国際通貨基金)などの支援もあって小康状態にあるように見えるが、ユーロ経済圏入りというユーフォリアに踊らされたバブル的な景気拡大の反動が短期間のうち終息するとは思えない。 中・東欧の不安定な金融・経済情勢は国際金融システムのアキレス腱とも言える。

 第2に、国内の企業金融が一段と逼迫する可能性がある。 政策投資銀行や日銀によるコマーシャル・ペーパーや株式の購入、さらには、政府の信用保証制度拡充などを受け、これまでのところ企業破綻の拡大はなんとか回避されている。 しかし、油断は禁物である。

 問題なのは、生産の早期回復を展望できないことである。 米国の製造業新規受注指数などの先行指標からみて、日本の輸出は年央にはなんとか下げ止まるかもしれないが、夏場にリバウンドするシナリオはまだ描けない。 一方で、夏のボーナスが大幅に削減される可能性が高く、消費マインドは5、6月頃から一気に悪化しそうである。 このため、消費を中心に内需は夏場にかけて一段と縮小するだろう。 外需の低迷が継続している状況で内需がさらに落ち込めば、生産活動は夏場まで弱含みで推移すると予想せねばならない。

 このことは、企業の営業キャッシュ・フローが7−9月期にかけて減少し続ける可能性が高いことを示唆している。 3月期を乗り切った企業が9月期に手元流動性不足に陥るリスクを否定できない。 こうした事態を回避するためには、当局がさらに思い切った企業金融支援措置を打ち出す必要があるが、現状では動きが鈍い。

 第3に、国内政治情勢が一段と不安定化した。 より具体的には、足元の政治献金問題もあって衆院選後の政治体制が極めて読みづらくなった。

 こうした不透明性の高まりは株式市場にとってマイナスである。 政治情勢混迷の下で国民の内閣支持率は低位のままで推移する可能性があるが、一部の海外投資家は内閣支持率の低さを嫌うだろう。 内閣支持率の低さイコール国民の将来期待の低さ、という考え方があるからである。 国民のコンフィデンスが低い国の株は買いづらいというわけだ。

 また、政治情勢が不安定化すれば有効な景気対策が打たれにくい、というより直接的なディメリットもある。 最近、与党や政府の一部からは無利子・相続税免除国債の発行によって大型追加景気対策を策定すべきという議論も聞かれていたが、そうした議論はモメンタムを失うかもしれない。

 上記の3つの悪材料からみて株価がもう一段下落するリスクを看過し得ない。 その意味で今後数ヶ月については、株価が横這い圏内で推移すれば、それで良しとしなければならないのではないだろうか。

 

以 上
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