2009年05月25日

白川 浩道
引き続き株価下落リスクに注意


 前号では、「3月中旬から4月末にかけての2割弱の株価上昇は出来過ぎであり、下落リスクがある」と書いた。しかし、その後、5月に入ってからも株価は下がらず、5月22日の終値は9,225円と9,000円台をキープした。結局、株価は3月中旬から25%も上昇した。

 足元も含めた株価上昇の背景は、前号で指摘したとおり、景況感の短期的な改善と米国金融システム不安の一時的な後退であり、新規に明るい材料が出てきているわけではない。

 むしろ、過去1、2週間については、景気や株価にとって悪い材料が出始めた。足元で急激に株価が上昇したことを考えれば、向こう1〜2ヶ月のうちに株式市場の方向性が変化するリスクが十分にあり、注意が必要である。

 悪材料の1番目は、米国製造業関連データの改善の停止である。データが悪化を始めたとまでは行かないが、過去3ヶ月程度にみられていたデータの改善は止まった。在庫調整が一巡してしまい、生産の回復力が鈍ったためであろう。日本からの電子部品などの輸出は夏場にかけて回復するとみられるものの、秋以降は再び弱含む可能性が高い。悪いニュースである。

 第2には、ドル安の再燃である。ドル・円相場は、4月末、98円台であったが、足元では94円台が定着しつつある。ドルがユーロに対しても弱くなっているため、ユーロ・円相場では円高を免れているが、対ドルでの円相場の基調は明らかに円高方向に振れている。円高は日本企業の利益にマイナスである。

 ドル安の再燃には、欧州の銀行のドル資金ニーズが低下したという技術的な側面もあるが、ビッグ・スリーの経営破綻を受けて米国の金融システムが再びやや不安定化するリスクを為替市場が意識し始めたことも反映している。この点には要注意である。

 第3に、国内雇用情勢の急激な悪化である。3月の国内の完全失業率は4.8%となり、2月の4.4%から大きく上昇した。4.8%という水準は2004年8月以来の高い水準である。雇用情勢の急激な悪化は企業による派遣社員の削減が主因であるが、正規雇用にも削減の傾向が見られ始めている。また、新規採用は大きく停滞している。

 生産活動は夏場にかけて一時的に回復する見込みであるが、雇用は回復しないだろう。生産の回復は非常に低い水準からの回復であり、適正レベルの7割まで回復すれば“御の字”という状況だからだ。多くの製造業企業が、生産活動が回復しているにもかかわらず、次々と雇用リストラ計画を発表するという皮肉が起こるだろう。

 第4に、国内政治情勢の悪化である。小沢氏の辞任によって民主党のトップが交代したが、斬新さはなく、国民の政治不信が再び高まる可能性がある。与党・政府は総額15兆円もの景気対策を策定したばかりであり、国民の期待が高まるような新たな策を出せるはずもない。国内政治情勢は再び停滞する。これは悪化を意味する。

 最後に、豚インフルの国内発生である。政府の積極的な水際対策は、その効果の問題は別として、国民の新型インフルに対する警戒心を高めるのに十分な役割を果たした。景気への悪影響は既に国内旅行の縮小などといった形で顕在化している。

 このように、株式市場に引き続き蔓延している楽観論を懸念しなければならない理由はいくつもある。筆者の悪い予感が当たらないことを祈る。

 

以 上
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