2009年09月02日

白川 浩道
“衆院選後”を読む


 今回の衆院選では民主党が308議席(公示前115議席)を獲得し、圧勝した。 参院での協力関係を背景に、社民党、国民新党と連立政権を組むことになれば、議席数は318議席となる。 さらに、連立政権への参加の可能性を否定できない「みんなの党」を加えれば、新政権の議席数は323に達し、3分の2である320議席を上回る。 現状で判断する限り、かなりパワフルな野党政権が誕生することになると言わざるを得ない。

 さて、民主党政権の誕生は日本経済や株式市場にどのような影響をもたらすのか。 ここでまず指摘したいのは、短期的にはプラス、ということだ。

 第1に、民主党政権の誕生で景気がいわゆる“二番底”に陥る可能性は低下した。
新型子ども手当てや暫定税率の引き下げ等の家計所得支援策が、2010年度について6兆円強、2011年度について10兆円程度、計画されているからだ。

 第2に、財政赤字拡大懸念を通じた悪い金利上昇が景気に冷や水を浴びせる可能性は低い。
追加景気対策にかかる費用の大部分は、いわゆる“埋蔵金”(国の特別会計の余剰金)、無駄な公共事業の削減、独立行政法人等への補助金や公務員人件費の削減によって捻出され、国債発行につながらないと予想される。 今年は麻生政権の大型景気対策を受けて国債が17兆円近くも増発されたが、来年は国債発行額は間違いなく減る。 しかも、減額の規模は13〜14兆円に達するはずだ。

 第3に、行財政改革が予想以上に進展しそうである。
衆院選における圧勝と世論の追い風を受け、独立行政法人や特殊法人等への補助金を大幅に削減できる可能性が出てきた。 これは立派な行財政改革であり、外人投資家の中には、民主党の政策を2005年秋の郵政改革以上のものと高く評価する動きが出てくるだろう。

 第4に、市場では、日本経済の潜在成長率が上昇するかもしれない、との見方が台頭するだろう。 日本における少子化の最大の要因が所得水準の低迷にあることから、新政権が導入する新型子ども手当てが出生率の上昇をもたらす可能性があるとの意見が強まるためだ。

 このように、向こう半年程度は、好材料が幅を利かせるだろう。 しかし、やや長い目でみた場合、懸念材料がないわけではなく、時間の経過とともに、懸念材料に市場の注目が移ってしまう可能性がある。

 製造業への派遣の原則禁止に伴う労働市場の流動性の低下、公共投資の削減に伴う社会インフラの劣化、戸別農家所得補償による農業の生産性低下、などが日本経済にジワジワと悪影響をもたらすかもしれない。 そうした懸念が出てこよう。

 また、年金・医療といった社会保障制度の拡充を目的とした増税が不可避となる可能性があるが、その際、富裕層家計、大企業、リスク資産が増税の対象となる可能性を否定できない。 これが産業や金融市場の空洞化を招くとなれば、市場は問題視する。

 従って、株式市場に臨む姿勢は、慎重さを忘れず、また機動性を維持しつつ、向こう数ヵ月については強気、というものになるのではないか。

 

以 上
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