2009年10月29日

白川 浩道
始まる増税、離れる外人


 前回のレポートでは、「選挙後の過去1ヶ月間を振り返ると、強気姿勢を維持することに大きな不安を覚える。いくつかの悪材料が噴出し始めており、それらが株価の足をひっぱる可能性があるとみられるからだ。」と指摘した。 そして、悪材料として、新政権に経済成長戦略がないこと、政治的な安定性に不安があること、国民のマインドが本当に改善しているわけではないこと、の3点を挙げた。

 残念ながら、事態はさらに悪化している。 財政赤字問題という悪材料が追加されたからである。 これから半年以内に株価の大きな調整が起こるリスクが出てきたと考えられる。

 最大の問題は、いとも安易に増税が選択されてしまう公算になったことである。

 新政権は行財政改革の御旗の下、歳出を切り込んで財政再建を達成してくれるのではなかったのか、と多くの国民が思うことだろう。 しかし、民主党は、はじめから、「行財政改革によって財政再建をする」とは言っていない。 「行財政改革によって新たな“バラマキ”措置の財源を手当てする」と言ってきたに過ぎない。 ということは、景気の悪化で税収が急激に落ち込んでしまった分は赤字国債で手当てするしかなかったのである。 しかも、行財政改革が一朝一夕ではできないことが判明しつつある。 それが絵に描いた餅に終わる可能性すら出てきたのである。

 「赤字国債発行額が今年度は50兆円、来年度も42−43兆円に上る」という見通しが財務省から示され、国民のバッシングが強まるやいなや、新政権は浮き足立ち、早期増税に舵を切った。 消費税増税は4年間は凍結するというマニフェストでの公約が足かせになって、消費税増税は完全なタブーだ。 このため、個人所得税増税しか選択肢がない。 具体的には、所得税の各種控除を縮小する方向にある。 配偶者控除のみは維持される見込みであるが、扶養控除、特定扶養控除、給与所得控除といった各種は、廃止ないしは減額される(あるいは上限額が設定される)見込みである。 さらに、個人所得税(国税)の最高税率が40%から50%に引き上げられる可能性すら否定できない。

 こうした所得税増税のターゲットは選挙への影響が出にくい高額所得者である。 具体的には年収(額面)が1,800万円を超えている人にはかなりの税負担増になる可能性がある。 イメージ的には年間50、60万円の増税は不可避な情勢で、場合によって100万円単位で増税になる可能性もある。

 こうした高額所得者向け増税で話が完結するならばよい。 しかし、高額所得者向け増税だけでは税収を2、3兆円増やすのが精一杯であり、歳出に大ナタを振るわない限り、より大型の増税が不可避なのは明らかである。 新政権の行財政改革が見かけだおしに終わりそうな今、将来の大型増税不安は日増しに高まっている。

 近い将来に起こるかもしれない大型増税のリスクを見始めたのは外人投資家である。 彼らにとって今の日本市場は「怖くて手が出せない市場」になった。 世界景気が最悪期を脱したとみられること、日本企業には高い環境技術力があることなど、好材料がないでもない。 しかし、財政赤字を巡る混乱は大きな懸念材料となってしまった。 新政権がより踏み込んだ歳出削減と安易な増税に頼らない財政再建シナリオを示さない限り、日本株市場の先行きは暗い。

 

以 上
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