2009年12月22日

白川 浩道
低成長打開の糸口見えない日本


 国内景気の緩やかな回復が継続
 2010年の景気展開はどうなるのか。 先月の半ばにかけて“二番底”的な景気悪化が懸念されたが、足元では“二番底”リスクがやや遠のいたとみられる。 公共投資の大幅削減が景気下押し材料となることに疑いの余地はないが、子ども手当てなどの個人所得補填措置を背景に個人消費の底割れはなんとか回避されそうだ。 また、想定よりも世界景気は好調だ。 在庫関連指標は世界的に“在庫積み増し”が必要であることを示唆しており、世界の生産活動がピークアウトするシナリオは2010年前半は描けない。 日本の輸出も当面は底堅く推移するものと予想される。
 さらに、重要なことは、2010年はドル安の修正が進む(つまり、ドル高・円安になる)可能性がある。 ドル高は企業利益、国内景気の押し上げ要因になる。
 なぜドル安の修正が進む可能性があるのかというと、米国ではもう金利水準が下がらないと考えられるからである。 米国では足元からオバマ政権の景気対策が本格化し、公共事業が拡大する。雇用調整も上向いてきた。 大手金融機関の経営環境も改善している。 経済成長率は向こう数四半期は年率で3、4%を維持できそうである。 このため、超低金利政策は2010年央には修正される可能性がある。 そうなれば、ドル高傾向が強まるはずだ。

 構造的な足かせで低成長が継続
 しかし、日本経済には、以下に指摘するように、いくつかの構造的な足かせが存在しており、低成長が打開される糸口は依然としてみえない。 ドル高傾向が株価を押し上げる可能性は否定できないが、本格的な上昇相場とはならないであろう。

 遅れる世界経済の構造変化への適応
 世界経済には大きな構造変化のうねりがある。 それは世界需要のエンジンが先進国から新興市場国・途上国にシフトしていることだ。 民間部門のバランスシート調整圧力が大きい先進国経済では成長率が低迷する一方、社会インフラ投資拡大などを追い風に新興市場国・途上国経済では高成長が持続する公算にある。 IMFの見通しによれば、2010年から2014年にかけての先進国(アジアNIEsを含む)の平均実質成長率は2.3%であるが、新興市場国・途上国のそれは6.1%であり、世界経済成長の実に7割強を新興市場国・途上国が稼ぎ出す。 しかし、日本企業はこうした世界経済の構造変化に十分に適応できていない。 日本企業の海外現地法人売上の地域別シェアをみると、北米・欧州の合計で55%弱あり、依然過半を占めている。 過度な欧米依存からの脱却が遅れれば、世界成長のメリットを受けにくい。

 描けないデフレ克服シナリオ
 第2の問題は賃金デフレの深刻化である。 国内雇用市場では、製造業から広い意味でのサービス業(医療・福祉業、卸・小売業、飲食・宿泊業を含む)に人が流れているが、サービス業の賃金は相対的に低く、平均賃金は趨勢的に低下している。 賃金デフレを克服するためには、サービス業の賃金水準を引き上げなくてはならないが、これは容易ではない。 広義サービス業も他の産業と同様、1990年代初めの国内資産バブル崩壊後、慢性的な供給超過状態に苦しんでおり、需給改善の見通しが立っていないからである。

 進まない財政赤字削減
 財政赤字のGDP比率は、向こう数年間、10%を大きく下回ることはない。 このため、国民の将来不安は高まることはあっても低下することはない。 将来不安が高まれば、現役世代は貯蓄性向を高め、消費性向を弱める。 これがデフレを深刻にすれば、税収が落ちて、さらに財政赤字が膨張する。 まさに悪循環である。
 筆者の試算によれば、年金・医療・介護といった公的社会保障について現行制度を維持した場合、GDP成長率が0%程度で低迷すれば、消費税率を35%まで引き上げないと政府の借金が爆発的に増えてしまう。 もはや財政赤字削減と政府の借金の抑制は増税だけではまかなえない。 残念ながら、社会保障給付額を大きく削減するしかない。 しかし、現政権は、社会保障制度改革、税制改革のいずれにも後ろ向きであり、財政赤字の縮小を展望できない。 問題である。

 

以 上
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