2000年12月01日

白川 浩道
10年債利回りの大幅低下は一時的な現象か

 10年債利回りの低下が続いている。日銀によってゼロ金利政策が解除された8月の半ばから0.2%もの低下である。景気に対する先行き不透明感、株価の長期低迷、金融緩和の思惑、それらを背景にした外人投資家によるやや投機的な買いなどが背景となっている。果たして、こうした長期金利の低下はどの程度長続きするものであろうか。

 長期金利推計モデルによれば、今後半年程度を展望した10年国債利回りのレンジは1.6%〜2.0%、予測の中心値は1.8%である。従って、1.6%を下回るような水準にまで長期金利が低下すれば、ややオーバーシュートしている感は否めない。なお、推計の前提は、景気は10−12月期をピークに1−3月期にかけて緩やかな調整局面入りすること(しかし、金融政策の変更は行われないこと)、企業・家計の資金需要のトレンドには変化が生じないこと、来年度の新規国債発行額が30兆円強に止まる下で財投債が大きな需給悪化要因とならないこと、である。

 10年債利回りが、こうした「コンフォート・ゾーン」にどの程度の期間止まるかといった点を考える上では、「外人投資家」の投資スタンスと、国内投資家のリスク・バランスに対する評価、の2つが決定的に重要な要素となる。今後半年以内といった期間を想定した場合には、外人投資家の積極姿勢がそれなりに継続するとみられること、貸出を中心とした信用リスクと国債投資の価格変動リスクを比較した場合、依然として多くの投資家は、価格変動リスクに対する許容度を高める可能性があること、から、「コンフォート・ゾーン」の上限をブレークする可能性は低い。

 しかし、少し長い目でみて場合には、長期金利が「コンフォート・ゾーン」を上抜けする可能性が大きい。まず、外人買いについては、来年春先以降、欧州投資家を中心に「ベンチマーク対比アンダーウェイト」といったテクニカルな要因を背景とした買いが一巡するとともに、日本国債投資の中長期的なリスクが見直される可能性がある。そうしたきっかけとして最も懸念されるのが、ムーディーズによる再格下げである。当社では来年夏場には再格下げがあるとみているが、景気の浮揚感がみられない状況では、「AA3、ネガティブ・ウォッチ」のリスクが十分にある。このように、シングルAへの格下げリスクが見える状況では、より大幅なリスク・プレミアムが要求される可能性が十分にある。

 また、国内投資家も国債投資に傾斜してきたことによる「集中リスク」に対する認識を高めざるを得なくなるはずである。預金通貨銀行といったカテゴリーでみた場合、8月末時点の国債投資額は90兆円を超え、バランスシート全体に占めるウェイトも12%となっている。99年初のゼロ金利政策導入直前には、投資額で46兆円程度、ウェイトも6%であった。今後、銀行部門がこれまでと同様のペースで国債投資を続けた場合、来年半ばにはバランスシート全体に占めるウェイトが15%に達する可能性がある。10%の価格変動はごくラフに言って1.5%も総資産の価値を変動させるのである。自己資本に与える国債投資の価格変動リスクは明らかに過大なものとなりつつあると言える。

 中期的には、外人投資家の買い余力に不透明感があるなか、「集中リスク」の怖さを考えれば、合理的な市場の行動は、「徐々にリスク・プレミアム」を要求していくことであろう。当社では、来年度の景気スローダウンを予想しているが、10年債利回りは来年夏場には上記コンフォート・ゾーンをあっさりブレークしているとみている。

以 上  
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