2010年08月04日

白川 浩道
止まらないドル安?


 参院選終了直後には、
 [1]日米関係の改善、
 [2]行財政改革・規制緩和の進展、
 [3]円高基調の修正、
という3つを材料に日本株が一時的にせよ上昇する可能性を指摘した。 しかし、日本株のパフォーマンスは依然として悪く、日経平均も10,000円を大きく下回ったままである。 株安修正をもたらすはずの3つの材料の全てに動きがないためである。 参院選敗北にもかかわらず、何事もなかったかのように現政権が存続し、思考停止の状態にある。 これでは株価の上がりようがないということなのであろう。

 しかも事態は再びやや悪化傾向にある。 普天間基地問題は8月末決着が見送られ、とりあえず11月中決着という方向になっている。 行財政改革や規制緩和に関しては、当面の課題である特別会計改革の動きが鈍い。 財務省が後ろ向きなためである。 為替相場に関しては円高修正どころか、対ドルではむしろ円高が進んでいる。 この原稿を書いている今もドルが85円を割れそうな状況にある。

 足元は円高というよりもむしろドル安である。 ユーロは6月上旬の最安値(1.19ドル)から10%以上も上昇している。 ギリシア問題や金融不安に揺れたユーロであるが、どうやら短期的には買い戻し局面にあるようだ。 対ユーロでもドルが嫌われている。

 なぜドルの信認が再び低下しているのであろうか。 それは米国景気を本格回復させる妙案がなく、いわばお手上げの状態に入りつつあるからだ。 中央銀行であるFRB、ホワイト・ハウスともに景気の先行きに底知れぬ不安感を抱いているものの、具体的に打つべき手を持ち合わせていないのである。

 最近、米国ではさかんに“米国の日本化”という議論が行われている。 「バブル崩壊後の米国経済は日本経済のようなデフレ状態に深く沈んでしまい、10年も20年も復活できないのではないか」という見方への支持が広がっている。

 先行き不安と無策。これは最悪の組み合わせである。 市場の米国経済に対する信頼は着実に蝕まれつつある。 これまでのところは「雇用市場が底打ちから緩やかな回復過程に入った模様である」という希望的観測がドルの暴落をなんとか防いでいるが、そうした希望的観測を打ち砕くようなデータが出てきたら、ドルはフリー・フォール(急激に下落)するかもしれない。 日本は為替介入によって対抗するかもしれないが、相場の流れを変えるのは無理だろう。

 問題は、米国自身がドル安を容認する可能性が高いとみられる点である。 ドル高政策の完全放棄だ。

 昨年末、フレッド・バーグステンという米国の著名エコノミストは、Foreign Affairsという外交専門誌への寄稿で次のように述べた。

 米国政府は、経済危機再発を回避することを目的に、自国の貿易赤字と海外からの米国への資本流入を大幅に削減すべきであり、そのためには“ドル高は国益”という見方を捨てるとともに、積極的にドル安誘導すべきである。

 つまりは、ドル安にすることで米国への資本流入が減れば、米国内で再びバブルが発生し、経済が混乱することもないはずだ、という考えである。 この主張のような形で米国が安定志向を強めた場合、強い米国経済とともに強いドルも消えることになる。

 為替相場の動きに一喜一憂する日本市場の先行きには大きな暗雲がたれこめ始めたと考えざるを得ない。 懸念される。

 

以 上
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