2010年09月01日

白川 浩道
中国リスクに注意


 世界経済は既に足元から“踊り場”に入っている。 景気回復のモメンタムが大きく低下し横這い状態にあるということだ。 さらに、年末にかけては“踊り場”から“後退的な状況”に追い込まれるかもしれない。 中国景気の本格的な鈍化が始まる可能性があるからだ。

 市場では米国景気の減速懸念が大きく取り上げられているが、世界成長に対するダメージという観点から言えば、中国景気鈍化の影響の方が大きい。 中国経済が二桁成長から6−7%に減速した場合、世界成長率はプラス4%程度から1%台へ鈍化するだろう。 欧米の内需が下を向いている中でマイナスの乗数効果が働くからである。

 世界成長率が2%を割ったら、少なくともミニ・リセッション(小規模の景気後退)の領域である。 リーマン・ショック後のような悲惨な状態にはならないにしても、世界中の多くの企業が業績の低迷を肌でしっかりと感じるレベルの低成長である。 世界的に株価の低迷が長引くだけでなく、割高感の強いニューヨーク・ダウが大きく崩れる可能性も出てくる。

 中国景気が鈍化しているのは投資偏重型の経済成長モデルが破綻しつつあるためである。 どんな経済でも投資のGDPに占める比率は高々20〜30%であるが、中国ではこれが50%を超えている。 中国は社会インフラの整備を口実に建設投資を闇雲に拡大させてきた。 しかし、そのツケは大きかった。 地方での過剰投資、公共投資プロジェクトの質の劣化、銀行不良債権の増加という問題が発生したのである。

 中国の場合、公共事業といってもその実態は銀行貸出のレバレッジをきかせた金融投資プロジェクトであり、その一部が腐り始めている模様である。 その帰結は金融システムの不安定化であり、中国当局はそのリスクを認識している。 そうであるからこそ、中国の金融監督当局は金融機関に対する規制を強化し始めた。 不動産バブルを拡大させないために信用規制を行っているという話を良く耳にするが、それは中国の規制強化の本質ではない。 規制強化の本質は、不良債権の適切な認定、会計基準の強化である。 要するに、「まじめに不良債権を開示せよ」ということである。 実態の把握が遅れた場合、対策が後手に回り、ハードランディングの可能性が上がることを当局は理解している。

 金融機関に対する規制・監督の強化は金融機関の融資態度を慎重化させ始めている。 当局の指導もあって既に銀行貸出の伸びはかなり鈍化しているが、年末にかけて急激に縮小する可能性がある。 信用収縮、過剰投資の巻き戻しによって中国経済の成長は大きく鈍化することになるわけだ。

 中国景気が鈍化すれば、ブラジル、オーストラリアなどの資源国の景気も悪化する。 既に両国の経済データは悪化している点には注意がいる。 中国を得意先にしているドイツも輸出鈍化のあおりを食う。 世界経済が全体に沈めば、日米の景気も後退圧力に晒される。 米国景気不安にばかり気をとられていて中国リスクに足元を救われないようにしなくてはならない。

 

以 上
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