2010年12月06日

白川 浩道
株価は長期的な上げ相場に


 これまでの慎重な見方を転換する。 世界景気は向こう4年半から5年は回復基調を続けるとみられ、株価は向こう4年程度にわたって上げ相場を演じるものと予想する。

 第1に、米国経済は最悪期を完全に脱した。 10年以内に再び深い景気後退や深刻なデフレに悩まされる可能性は十分にあるものの、向こう4、5年に限って言えば、景気の回復基調が続くだろう。

 米国経済で労働生産性が大きく回復したことは大きな収穫である。 政府やFRBは、5〜6%であった完全失業率が10%近くに上昇したことに懸念を表明しているが、これは政治的なポーズに過ぎない。 リーマン・ショック、GMショックは、米国企業に雇用面での贅肉を落とすチャンスを与えた。 つまり、多くの米国企業は、リーマン・ショック、GMショックを口実に雇用リストラを行い、労働生産性を高めることに成功した。 この結果、米国消費者のマインドこそ中所得層を中心に低迷を続けているものの、労働生産性の上昇を反映して給料は上昇を続けている。

 また、政府は、高所得層、富裕層に対する増税を見送る方針であるほか、評判の悪い医療制度改革も見直す方向にある。 中間選挙で野党共和党が大勝したからだ。 大雑把に言えば、平等社会志向を若干軌道修正し、競争社会、活力社会を目指す方向に舵を切り直すということだ。 これは経済の先行きにプラスである。

 第2に、アジアやラテン・アメリカといった新興国経済の成長は当面途切れそうにない。 ドル過剰流動性が新興国経済のインフレ圧力を高め、急激な金融引き締めによって景気のハードランディングをもたらすのではないか、という懸念は根強い。 しかし、そうした懸念は杞憂(きゆう)に終わるだろう。

 まず新興国は自国通貨の切り上げと金利の引き上げを開始した。 これは好ましい動きだ。 それに加えて新興国は様々な投機抑制措置を打ち出している。 中国しかり、ブラジルしかり、である。 食料にせよ、不動産にせよ、投機的な動きさえコントロールできれば、インフレ圧力はまだ懸念するほど大きなものではない。 先進国経済が病み上がりの状態にあり、需要面での過熱は世界的にはまだ生じていないからだ。 新興国の輸出がブーム的に伸びているわけでもない。 新興国は足元のインフレ圧力をうまく抑制することができるだろう。

 さらに、東欧などのごく一部の国を除けば、新興国全体としては民間貯蓄が拡大しており、対外収支も黒字を維持している。 新興国にホットマネーが流入し、投資が過度に刺激されているという状況にはない。 これは新興国の景気が急激に腰折れる可能性が極めて低いことを意味する。

 第3に、世界的に金融緩和状態が強まっており、長期金利が全般に低い。 景気回復基調の下で長期金利の低位安定が維持されれば、株価は上昇する。

 例外は、財政危機に直面しているギリシア、アイルランドなどのユーロ圏の小国である。 こうした国では財政不安で長期金利が大きく上昇している。 しかし、こうした財政事情の悪い国が存在することはむしろプラス材料である。 金融緩和が長引き、相対的にバランスシートが健全な国では、今後ますます景気が上振れる可能性が出てくるからだ。

 ユーロ圏のGDPは日本円で1100兆円強であり、日本の2倍強であるが、ギリシア、アイルランドにポルトガル、スペインを加えても170〜180兆円規模にしかならない。 4ヵ国がずっとゼロ成長を続けても(その可能性は低いが)、他の諸国が金融緩和の恩恵で3%成長となれば、ユーロ圏全体では2.5%成長を達成できる。

 世界経済が回復基調を維持できれば、日本経済も回復基調を維持できるはずだ。 一時期、韓国企業の台頭や円高進行を背景に、日本の国際競争力低下が心配されたが、今年の日本企業の決算内容は悪くなかった。 多く優良企業は国際競争に勝ち残れる手ごたえを感じられたはずだ。 日本企業のマインドはこれから改善傾向に向かうだろう。

 ちなみに、1970年代の以降の40年以上にわたる世界景気循環をみると、2つのことがわかる。 すなわち、
[1]景気後退から次の景気後退までのワン・サイクルは7〜10年である、
[2]過去の全ての世界景気後退は、中東が絡む戦争か、米国の景気後退、によって引き起こされている、
という2点である。

 このことは、米国景気が後退せず、中東不安によって原油価格が暴騰しない限り、世界経済では、今後少なくとも6年程度の景気回復局面が続く可能性が高いことを示唆する。 足元の局面について言えば、世界景気の回復はまだ始まって1年強である。 従って、世界景気は向こう4年半から5年は回復基調を続けるとみられるわけだ。

 しかし、4、5年の世界景気拡大の後には再び深い景気後退が待っている可能性が高い。 向こう4、5年にわたって景気が拡大すれば、どうしても投資の行き過ぎや株価の必要以上の上昇が生じてしまうとからである。 新たな投資ブームや株価バブルを抑制し、息の長い安定成長を達成することが理想ではあるが、現実にはそうはならない。 サブプライム・バブルは米国FRBの金融引き締めが遅れたことによって引き起こされたが、金融緩和の是正が絶えず後手に回るという構図は未来永劫不変であろう。 政策当局は経験から学ぶということをしないのである。

 いずれにせよ、向こう4年超の株価上昇局面が来ることを念頭に、その時々の情勢に応じて、対象資産・地域の軸足を変化させていく、というのが投資戦略の基本になるだろう。

 

以 上
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