2011年02月12日

白川 浩道
日本株の潮目に変化?


 TOPIXでみた日本の株価は年初から5%強上昇した。ニューヨーク・ダウ、ドイツDAX指数も同程度の上昇となっている。他方で、BRICsなど新興市場国の株価は調整している。

 新興市場国の株価が調整し、日米欧の株価が上昇を続けているのは、世界景気の牽引役がアジアを中心とした新興市場国経済から先進国経済にシフトしつつあるからだ。新興市場国の成長率は鈍化、先進国の成長率は上昇、というのが足元の市場コンセンサスである。

 新興市場国景気が鈍化するという観測の背景はかなり単純なものである。

 まず、第1に、天候不順などを背景に穀物価格、食料品価格の上昇が急ピッチで、エンゲル係数の高い新興市場国では家計所得が圧迫されることになる。消費減速だ。

 第2に、食料品価格上昇などによるインフレを抑制しようと、新興市場国では中央銀行が一斉に利上げを開始した。今のところ利上げはゆっくりしたものであり、不動産投資や設備投資が急減速する可能性は低い。それでも投資が鈍化するのは避けられまい、とみられているのだ。さらに、中国については、昨秋来の銀行貸出抑制策の効果から不動産バブルが崩壊し始めることを予想する向きも増えている。

 景気鈍化がみえてきた新興市場国からは資金を引き揚げ、先進国の株式市場には資金をつぎ込む、という動きは既にヘッジ・ファンドの間でかなり起こっている。先進国景気に対する彼らの見方は相対的に楽観的だ。
@ 新興市場国に比べてインフレ・リスク、利上げリスクが小さい、
A 優良企業の利益率が上昇している、
B 設備投資が調整局面を脱し、回復局面に入った、
C 米国では予想外に雇用が伸びそうだ、
などが好材料として指摘されている。

 そうした中、足元では、外人の日本株投資に対するスタンスが微妙に変化している。日本株投資に前向きになってきたのである。

 私なりに分析した要因を示すと、以下のようになる。

  1. 外人は国内政治情勢が最悪期を脱したと考えている。衆参ネジレなどの問題はあるが、菅政権が更なるネガティブ・ニュースを出してくることはないだろう、との見方が多い。

  2. TPP推進や財政構造改革への前向きな姿勢を素直に評価する声が多い。特にTPPに関しては、米国政府の圧力を受け、日本政府が郵政民営化に再度舵を切るのではないか、との思惑まで広がっている。金融改革、農業改革、財政構造改革など、外人は“改革”というフレーズが大好きである。“改革の雰囲気が出てきたら日本株にシフトしなくてはいけない”という肌感覚を持っている外人は多い。

  3. 日銀による株式ETF、REIT購入を“なんとなく気持ち悪い”と感じている外人がいる。彼らは、政府と日銀がデフレ脱却に本腰を入れ始めているのではないかといぶかっている。もし予想だにしない追加緩和があったら、日本株を持っていないことのリスクは大きいという考えだ。

  4. そして、最近の大型企業合併にみられる業界内再編の動きも、日本に弱気であった外人の目には不気味に映る。過剰供給に喘いでいるはずの日本企業は為替レート80円でも淡々と利益を出している。その日本企業が本格的に企業再編を始めたら、欧米企業はやられてしまうかもしれない、という懸念だ。

 早い話、外人の日本株に対する再評価は“日本株を持たざるリスク”なのである。政治、政策、企業が最悪期を脱したかのように見える今、日本株を持っていないと自分の運用するファンドがアンダーパフォームするのではないか、という恐怖なのである。

 日本経済のファンダメンタルズから判断する限り、日本株が本格的に浮上する可能性は依然大きくない。しかし、市場は生き物であり、絶えず合理的な判断するわけでもない。短期的には日本株が世界株をアウトパフォームする可能性がそれなりにあるだろう。

 

以 上
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