2011年03月10日

白川 浩道
世界は再び日本離れか?


 前原外相の辞任などもあり、国内政治情勢は混迷を極めつつある。

 衆院解散の可能性はどうか。衆院解散は民主党にとってはダメージがあるが、首相にとっては魅力的なオプションであるはずだ。衆院解散の大義名分を“消費税増税を含めた財政健全化路線に対する国民の信を問う”というものにできるからだ。首相は、後々、“勇気を持って財政健全化の道筋をつけた人物”と評されることになる。また、衆院解散によって、財政健全化責任法を国会提出した自民党を巻き込んでの政界大再編が起こる可能性もあり、実際、衆院選後に財政再建重視型の本格政権が誕生する可能性も否定できないわけであるが、そうであるならば、菅首相は国内政治改革における功労者にもなる。

 さらに、早期に衆院解散となった場合、子ども手当て法案や法人税減税を盛り込んだ税制改革法案は宙に浮くことになるだろう。政府における財政タカ派、つまり財政健全派にとっては、政治の混乱に乗じ、ばら撒きや安易な減税をスクラップできる可能性すら出てくる。

 要するに、政治の混乱の先にみえているのは、基本的には、“財政再建の進展”なのだ。40兆円、GDP比で8%を超える一般政府赤字を大きく縮小させることはできないにせよ、政府借金が膨張するペースを幾分なりとも抑制することができるかもしれないのである。

 しかし、そうした見方をすることは徐々にできなくなってきた。

 政府の現状維持志向というか、安定志向が再び強まってきたからである。1ヶ月くらい前に見え始めていた“財政再建のためには混乱もやむおえない”という動きは、足元で明らかに勢いを失っている。予算関連法案の一部をいわゆる“つなぎ法案”として切り出し、年度末期限切れに伴う混乱を回避するという動きは、政府の現状維持志向、安定志向の高まりを如実に表している。

 “予算関連法案(租税特別措置など)の期限切れで国民生活が混乱する”というが、本当にそうであろうか。財政再建を真剣に考えるタカ派であれば、期限切れによって国民生活が実際にどの程度混乱し、また国民の反発が実際にどの程度のものになるのか、見極めるべきではないか。それを行わずに、まさに敵前逃亡の形で安易なつなぎ法案提出に踏み切ることは、現政権の有力者の中に真の意味での財政タカ派はいないことを物語っている。厳しい言い方をすれば、消費税増税論も政府規模の拡大を許すための道具として位置づけられているに過ぎない可能性がある。

 “つなぎ法案”提出の動きとなったのは、公明党が賛成する目処が立ったことが大きい。やや繰り返しになるが、こうした流れは、ねじれ国会が予算関連法案の成立を阻み、さらには予算そのものの見直しを迫る、という“混乱型財政緊縮シナリオ”が崩れ始めた可能性を強く示唆する。

 公明党が賛成し、民主党が党内の分裂をなんとか回避できれば、予算関連法案を成立させることは可能である。一時的な混乱を回避することを優先すれば、民主・公明連立政権の可能性が上昇し、解散と財政緊縮化の可能性はともに低下する。外相辞任の先に続くものが民主・公明連立であれば、TPP参加を含めた経済構造改革の動きが鈍る一方で、福祉充実や財政拡大の動きは強まることになる。

 構造改革と財政拡大のいずれが国民にとって望ましいのか、意見の分かれるところである。しかし、金融市場は構造改革を望むのが常である。政治的安定と構造改革は短期的には両立せず、改革に混乱は付き物であろう。改革と混乱を嫌えば、市場からは見放されることになる。世界の投資家の日本離れが再び加速し、徐々にではあるが世界にキャッチ・アップし始めた日本株が下落しないよう、願うばかりである。

 

以 上
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