2000年12月25日

白川 浩道
安易なゼロ金利回帰は株安を招く?

 最近の急激な株安は、「株価対策のためのゼロ金利回帰論」を台頭させている。確かに、ゼロ金利回帰論はそれなりに筋が通っている。なぜなら、生産活動等経済のサプライ・サイドは既にピークを越えており、需要サイドも今後半年もすれば、はっきりとした減速が見えてくると考えられるからである。金融政策の効果波及のラグを考え、フォワード・ルッキングに行動するとしたら、来年1−3月期中にゼロ金利回帰を決めることが妥当かもしれない。株価を実体経済活動の先行指標とみなしたファイン・チューニングである。

 しかし、個人的には、こうした株価対策のゼロ金利回帰には反対である。なぜなら、日銀が、敗北宣言とともに、ゼロ金利回帰を決定した場合には、市場で、円安、株安、さらに債券安のトリプル安が生じる可能性が高いと考えているからである。

 「安易な株価対策としてのゼロ金利回帰」を行った場合、行き着く先は、結局、「長期低成長」の可能性が高い。今度、ゼロ金利に回帰するときは、中途半端な量的緩和ではすまされないであろう。まさに、マネタイゼーション一歩手前のことが要求されよう。それは、ゼロ金利解除失敗論、日銀責任論が付きまとうからである。2度目のゼロ金利政策の下では、まさしく、全ての企業を救うことが求められるのである。市場から退出すべき非効率企業、非生産的企業もすべてをレスキューするオペレーションとなるのである。その結果何が起こるであろうか。日本経済の構造改革は恐ろしく後退することになる。市場メカニズムは機能せず、非生産的な企業から、資本や労働が移動することもない。モラルハザードが横行し、全ての経済主体がインフレによる帳消しのみを期待するような経済が出現しよう。確かにインフレによって資産デフレは解消するかもしれない。しかし、生産性の向上はさらに望むべくもなく、実質成長率は低迷することになろう。そして、インフレ政策が為替減価を通じて国際的に認められなくなったところで、政策は息詰まり、経済は失速することになろう。潜在的な成長率が回復しない世界で、経済が低成長から脱却することはない。ゼロ金利政策で一旦株価は上昇するかもしれないが、潜在成長率に対する悲観論と同時に株価は停滞しよう。ゼロ金利政策は、日本の株式市場の息の根を止めてしまうことになり兼ねない点を理解しておく必要がある。

以 上  
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