2001年01月18日

白川 浩道
株価下落でオールドエコノミーの脆弱性が再び表面化?

 世界経済の先行き不透明感が高まる中、株価の下落基調が続いている。ここで、まず重要なことは、現在の日本経済が、こうした世界経済・金融資本市場の調整に対してどの程度バルナラブルか(脆弱か)、という点である。逆に言えば、米国経済、アジア経済の減速が生じても、日本経済だけが緩やかな回復基調を継続する可能性があるかどうか、ということである。残念ながら、こうした問に対する答えは、現状では「ノー」と言わざるを得ない。すなわち、世界経済が減速し、株価の低迷が長引けば、日本経済はかなりのダウンサイド・ショックを受けざるを得ないのである。チャートがごく端的に示すように、昨年にかけての景気回復局面では、世界的なIT関連需要の高まりに支えられたニューエコノミー企業(電気機械、非鉄金属、通信がその代表)の業況判断が大きく上向いた一方、建設、小売といった国内型オールドエコノミー業種では、業況判断は改善こそ示したが、そのペースは緩やかなものに止まった。世界経済のスローダウンによってニューエコノミー企業の多くが打撃を受けるとみられ、今後はオールドエコノミー企業の構造的な弱さが再び次第に浮き彫りになる可能性が高い。

 オールドエコノミー企業の脆弱性は、そのバランスシート調整が十分に進んでおらず、依然として、金融システムの健全性によってその業況が大きく左右されるという点に要約される。最近の株価下落は銀行部門のバランスシートを大きく毀損した。当社の推計によれば、昨年末時点(日経平均が13786円)でみた国内銀行銀行勘定の保有株式時価総額は 41兆円程度であり、これは直近のピークである99年末時点の57兆円強から、実に16兆円もの縮小となっている。この16兆円という額は同部門のコア資本の50%にも相当する金額であり、仮に資本注入等により新たな金融システム危機は回避されたにせよ、金融機関のリスクテーク能力が大きな影響を受けないはずはない。

 金融機関のリスクテーク能力の減退が招く帰結は2つである。1つは、不採算先に対する支援の後退による倒産の増大であり、もう1つは、中小企業等相対的に信用リスクの高い先に対する融資の慎重化である。とりわけ今回の景気後退局面で注意しなければならないのは、前者であり、従来、大企業であるために潰すことを避けてきた先(小売、建設)で、ついに淘汰が進む可能性がある。当社では、依然から、「日本経済においてもっともリストラが遅れ、生産性の改善がみられないのは大企業製造業」としてきたが、まさにそうしたオールドエコノミーでの調整圧力が一気に高まる可能性がある。こうした大企業の倒産はどのような効果を持つであろうか。この夏以降も、大規模企業の倒産は何件かみられた。そのたびに消費者や企業へのコンフィデンスへの影響が懸念されたが、これまでのデータを見る限り、大きなショックは生じていない。しかし、今後もそうした状態が続く保証はい。最後まで延命してきた先の傷は深いとみられるほか、そうした先の破綻が短期間のうちに集中して表面化する可能性が高いからである。コンフィデンスの悪化は消費マインド、設備投資マインドにそれなりの影響を与えるとみておく必要がある。

以 上  
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