2000年6月13日

白川 浩道
定額郵貯満期資金の消費押し上げ効果は1%強?

 号では、「個人消費回復の鍵を握るのは、消費者コンフィデンスの改善であるが、 そのコンフィデンスは、少子化、高齢化等を背景とした潜在成長率の低下懸念や、税・社会保障負担の高まりに対する不安など、 構造的な要因が大きく影響しており、依然低迷している」と論じた。企業所得の環境が徐々に良くなっていることはフォローであるが、 消費の本格回復は望みにくいということである。

 て、現実の統計データに目を落とすと、最近1、2ヶ月については、 消費関連で予想以上に強い数字が出ている。特殊要因(自動車関係費の大幅増)の影響を幾分割り引く必要はあるものの、 4月の家計調査ベースの実質消費は前年比+1.3%(3月は▲4.3%)となった。また、5月の乗用車新車販売(軽を含む)は前年比+3.6%と、 4月(+1.4%)から伸び率を高めている。百貨店売上にも回復の兆しがある。こうした消費の動きを解釈する場合、 短期的に企業の所得環境が改善していることに加え、高金利の定額郵貯が満期を迎えたことによる「郵貯効果」を見逃してはならない。

 5月のマネタリー・ベースの前年比は+7.6%と4月(+11.7%)から減速した。 内訳をみると、銀行券の伸びが+7.8%、日銀当座預金の伸びが+11.1%であった。 さて、Y2Kの影響によって伸びが大きく高まる前の平均的な銀行券の伸びは+6%程度であった。このことからすれば、 5月時点では、前年比+2%ポイント程度、実額にして約1兆円、銀行券残高が嵩上げされた計算となる。 ここで、4、5月に定額郵貯から郵貯以外に流出した額を別途試算してみると、2.6兆円程度となることから、計算上は、 残りの1.6兆円(=2.6−1.0兆円)が他の金融商品や消費に回ったことになる。正確なことを言うには、 主体別銀行預金統計等を分析する必要があるが、仮に、この2ヶ月間で1兆円程度が他の金融商品に回ったとすれば、 消費に回った額は5000〜6000億円ということになる。

 金として一時的に保有されている1兆円(嵩上げ分)も、将来的には消費に回る可能性がある。 しかし、超低金利の下で現金保有の機会コストが極めて小さい状況では、現金のままで支出に回らない可能性が高い。 ただ、そうであっても、満期郵貯が消費として支出される割合は、上記の試算によれば、 払い戻し額の6、7%(=0.6兆円/8.8兆円<4、5月満期額>=6.8%)にも達した計算となる。この数字は侮れない。 今年度全体でみれば4兆円程度(=60兆円*6.8%)となり、単純計算では、個人消費を1%強押し上げることになるからだ。 こうした「郵貯効果」は、所得面の改善感が強い時期に大きな力を発揮しよう。 家計所得がピークの状態を迎える4−6月、7−9月期には、一時的に、消費面で「良い数字」が続く可能性がある。

以 上  
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