2001年03月08日

白川 浩道
焦点:ゼロ金利政策後のポイント
  • 銀行の不良債権処理加速や財政構造改革とのセットで、日銀による一段の金融緩和を求める声が強まっている。確かに、銀行と政府がともに、自分たちのバランスシートの健全化に真剣に取り組み始めれば、短期的にはデフレ的なショックが高まることになり、こうした圧力に日銀が対抗せざるを得なくなるのは明らかである。

  • 日銀がゼロ金利政策に回帰するのは時間の問題である。しかし、ゼロ金利回帰後、日銀が当面採用できる政策オプションはそう多くない。この点について、現状で理解しておくべきことを簡単に整理しておきたい。

  • 政府が、不良債権処理や財政構造改革のグランドデザインを示すことが可能なのは、参院選明けであろう。そうであるとすれば、それまでは、景気の短期的な下振れを恐れて、ドラスティックな政策転換は行いにくいことになる。不良債権処理は着実に進展しようが、連鎖倒産によるデフレに対するセイフティネットの議論が整うまでは、処理に目処が立ったと評価できるほどの状況にまでは到達しない可能性が高い。財政構造改革についても、この市場環境で引き締め転換の宣言まで行える度胸は大蔵省にはない。いずれにしても、選挙までは大きな動きはないとみる。

  • 不良債権処理、財政構造改革のマグニチュードが依然として読めない状態で、日銀だけが先行してドラスティックな量的緩和に入る合理性には乏しい。ただ、植田審議委員がコメントしているように、ゼロ金利に戻った後に「何らかの工夫」が必要なことも事実である。ゼロ金利後のオペレーションを読むと以下のようになる。

  1. 日々の調節では、前回ゼロ金利時と同様、市場の余剰資金を平均して6,000〜7,000億円とするものとみられる。

  2. 余剰資金は、CP・社債等担保オペの積極化、ロンバート貸出制度の活用、TB買切りオペの活用などのミックスで行われる可能性が高い。

  3. 日銀にとって、国債買切りオペの増額を行う理由に乏しい。最大の理由は10年債利回り水準の低さである。日銀が長期国債の市場にさらに介入すれば、さらに利回り水準を低下させ、市場を歪めると同時に、財政構造改革の議論を遅らせる可能性があるからである。日銀が国債買切りオペを増額するのは、景気腰折れ懸念が財政破綻懸念につながり、10年債利回りが「悪い金利上昇」によって2%近くまで暴騰した場合である。

  4. ただ、これでは、ゼロ金利政策に新味がなく、日銀バッシングは衰えない。このため、1つのアイデアとして、為替市場に対する非不胎化介入が有り得る。しかし、これは、積極的な円安誘導政策とはならない可能性が高い。円が米国経済の不透明感の高まりなどで上昇した場合に、円高を阻止するために利用される、「消極的なドル防衛」となる可能性が高い。

  5. 上記のように考えると、依然、ゼロ金利回帰後も金融調節の大まかなフレームワークは変わらず、工夫も乏しいということになろう。ただ、不良債権処理と財政構造改革に対する政府のコミットメントが、参院選後、大きく高まれば、話は別である。この場合、日銀としては、インフレ・ターゲッティングの道を選ばざるを得ないかもしれない。CPIでみて0%インフレを維持することにコミットするというのが最も可能性が高い。

以 上  
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